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「Razer Tiamat 7.1 V2」レビュー。今や貴重なリアル7.1ch出力対応ヘッドセットは誰のためのものか
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印刷2018/03/31 00:00

レビュー

今や貴重なリアル7.1ch出力対応ヘッドセットは誰のためのものか

Razer Tiamat 7.1 V2

Text by 榎本 涼


 Razerがしぶとく市場へ投入し続けているものの1つに,「リアル7.1ch出力対応ヘッドセット」がある。片耳あたり5基,計10基のスピーカードライバーを搭載し,内部で配置や角度を変えることで,7.1chスピーカーセットのような音場を実現するというアレだ。

 最近ではバーチャルサラウンドサウンド技術の選択肢が増え,また品質も上がってきたため,リアル7.1ch(あるいは5.1ch)出力対応ヘッドセットをあまり見かけなくなってきたが,Razerは依然として諦めていないようで,2012年に発売された「Razer Tiamat 7.1」(以下,Tiamat 7.1)以来の新作となる「Razer Tiamat 7.1 V2」(以下,Tiamat 7.1 V2)を2017年10月に国内発売した。今回取り上げるのはこの第2世代モデルだ。

Razer Tiamat 7.1 V2
メーカー:Razer
問い合わせ先:MSYサポートセンター 電話:048-934-5003
実勢価格:2万4700〜2万7000円程度(※2018年3月31日現在)
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 ダミーヘッドを使ってリアル7.1ch出力対応ヘッドセットをテストするのは今回が初めてだが,どういう結果が得られるだろうか。細かくチェックしていきたい。


初代機と基本コンセプトは変わらない一方で,見た目は向上


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 まずはそのユニークな外観から見ていきたいと思うが,やはり目立つのは「中を覗ける」エンクロージャ部だろう。中央にある40mm径のサブウーファ用ドライバーと,その奥にある30mm径のフロントおよびセンター用ドライバー,20mm系のサイドサラウンドおよびリアサラウンド用ドライバーが,LEDイルミネーションによって照らされる仕様になっている。サブウーファ用とセンター用のドライバーは左右エンクロージャに散っているため,7.1ch出力対応ながら,スピーカードライバーの数は合計10基という計算だ。

左耳用エンクロージャを見たところ。中央に見えるのがサブウーファ用ドライバー。その奥は推測だが,写真左上がフロント用,下がセンター用の30mm径ドライバーで,写真右上がサイドサラウンド用,右がリアサラウンド用の20mm径ドライバーと思われる
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Tiamat 7.1 V2全景
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 2012年の製品と細かく比較しても憶えていない人のほうが多いと思うが,「本体とインラインリモコンをケーブルでつなぐ仕様」「マグネットで固定できる,着脱式のエンクロージャカバーが付属」といった基本的なデザインは,初代Tiamat 7.1と共通だ。もっとも,初代モデルだとエンクロージャのカバーを取り付けてもRazerのロゴは光り続けていたのに対し,Tiamat 7.1 V2だとカバーを付けるとLEDイルミネーションは見えなくなるので,メリハリが効いている。

エンクロージャ(左)と,そこに付属のカバーを取り付けたところ(右)。カバーのほうはツヤなしで,よく見るとRazerロゴが入っている
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ちなみにこちらが初代Tiamat 7.1だ。基本コンセプトは同じだが,エンクロージャ部ではLED入りRazerのロゴが自己主張し,一方でエンクロージャ内部にLEDイルミネーションは搭載されなかった
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 LEDイルミネーションはRazer独自のLED制御技術「Razer Chroma」対応。複雑なライティング仕様の割に,かなりきちんとした色が出るのは,さすがRazerといったところか。

Razer ChromaからLEDの色を変えてみたところ。左から赤,橙,黄,緑,水,青,桃,白だ。スピーカードライバー上にある緑の枠がちょっとうるさいものの,色自体は割とキレイに出ている
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 エンクロージャ全体の大きさは最も長い部分の実測で装着時に約50(W)×85(D)×110(H)mm。初代Tiamat 7.1と比べると厚みがなくなり,明らかにすっきりした見た目になっている。どうしても中身の見えるエンクロージャに目が行きがちだが,初代モデルのゴツさはかなり薄まっており,全体としてはミニマルに近い印象がある。

初代Tiamat 7.1はとにかく「でかい」印象だったが,Tiamat 7.1 V2では「ちょっと大きい」レベルにまで小型化している。LEDイルミネーション以外はほぼ黒一色といった風情だ
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 エンクロージャ内側のイヤーパッドは,厚みが実測約20mmとかなりある。ほとんどのケースにおいて,耳たぶに当たって不快な思いをすることはまずないだろう。
 ちなみにこのイヤーパッド,着脱式なのだが,取り付けるとき「エンクロージャ側の溝に合皮の先端部を差し込む」というよくあるタイプではなく,4か所の穴と突起でエンクロージャ側に固定する填め込み式になっており,圧倒的に着脱がしやすい。

柔らかく肌に合う感じのクッションを覆うクッションカバーは合皮製だが,その先端を溝に差し込むタイプではなく,4か所の穴に突起を差し込むタイプ。「L」「R」表記があるため左右を間違える心配もない
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Tiamat 7.1 V2は“魚の開き”にできる。装着時のアーム可動域は前方,上下いずれも30度未満といったところで,必要十分
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 左右エンクロージャは,“魚の開き”状にできるアームと,それをつなぐ2本の金属製アーチによってつながっている。別途,2本のワイヤーでヘッドバンドを結び,ワイヤーが伸縮するという仕様は,とてもSteelSeries的だ。
 ヘッドバンドの外側はRazerのエンボス加工入りで,頭頂部に触れる内側は通気性のよいメッシュ素材をクッションカバーとして採用している。ちなみにクッションの厚みは実測約10mmで,薄い。スポンジにメッシュ素材を貼り付けてあるような印象を受けた。

「ほぼ黒」なガンメタル色をした2本のアーチで左右のエンクロージャをつなぐ仕様。ヘッドバンドは少し不安になるくらい薄い。今時の流行を意識したのか,スッキリしたデザインに仕上がっている
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 使わないときは跳ね上げておけるタイプのマイクブームは全長実測約80mmで,ブーム部は下ろした状態で約5(W)×8(D)mm程度の太さだ。一番下まで下ろした状態で若干視界に入る。ブームの取り回しはよくなく,少なくとも狙ったところへマイクを持って行けるような感じではない。

マイクブームは跳ね上げるとミュートになるという直感的なインタフェースになっている。ただ,可動範囲が狭く,一番下まで下げても視界の端にマイクが入ってしまい,調整もほとんど効かないのは少し残念だ
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 マイクの先端部は,口元側に大きめの空気孔が1つ,その反対側に小さな空気孔が1つある。ただ,製品情報によると指向性マイクとあるので,2マイクではなく,1マイク仕様のはずだ。

空気孔が2つなので,最近流行している双方向指向性コンデンサマイクではないかと考える人もいるだろうが,内と外で空気孔のサイズが異なるため,おそらくはカージオイド(cardioid,正面集中型)の指向性ではないかと思われる
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 外観の最後はインラインリモコンとケーブルだが,まずリモコンは突起部を除いて実測約83(W)×94(D)×45(H)mm。机上設置時の本体上面は最奥部がチャネルごとの音量を調整するためのセレクターで,その手前の大きなノブが音量調整用,そして最も手前にマイクミュート有効/無効切り替えとヘッドフォン/ラインの出力信号経路切り換え,「7.1ch」/「2.0ch」切り換え用となる3連ボタンが並ぶ仕様だ。
 実のところ操作系は初代Tiamat 7.1と同じだが,筐体自体は確実に小さくなっている。ケーブルが直付けなので正確ではないものの,インラインリモコンの重量は実測参考値で約155gと,けっこう軽い。

手前側のボタンは押すと光って動作モードを知らせてくれる仕様。ボリュームインジケータの色がここでは全部異なっているが,実はここ,Razer Chromaから色を指定できる
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ボリュームノブは押し込むことで出力全ミュート有効/無効を切り換えられる。全ミュート時は赤いスピーカーアイコンが表示される仕様だ
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こちらは本体奥側のダイヤル部。ここで調整したいチャネルを選んでからボリュームノブを回すことで音量の調整を行うことになる

 ケーブルは布巻き仕様で,端的に述べて太く硬い。具体的な長さと直径は実測で以下のとおりだ。

  • 本体からインラインリモコンまで:長さ約1m,太さ約4mm
  • インラインリモコンから分岐まで:長さ約1.8m,太さ約5mm

 インラインリモコンと,ケーブルの太さ&硬さが相まって,使っているとケーブルのテンションでインラインリモコンが“お散歩”状態になることがままあったことは述べておきたい。

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接続端子部。USB Type-AはLEDを光らせるだけでなく内蔵アンプの駆動用電力も給電しているので,接続していなければTiamat 7.1 V2自体を利用できない
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本体正面向かって背面側には4系統の3.5mmミニピン端子があり,ここにアナログ接続のマルチチャネルスピーカーセットを接続することもできる

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 最後に気になる装着感だが,総じてかっちりしているものの,適当に装着するとイヤーパッドの下側が浮き気味になることがある。なので,装着時に意識して少し下方向へ引っ張るのがいいだろう。一度きちんと装着してしまえば,ヘッドバンドがズレたりする心配はほぼ無用だ。
 そのヘッドバンドのクッションは薄いという話を上でしたが,その割に当たりはソフトで,とくに大きなストレスを感じることはなかった。

 重量は本体実測で約360g。重めの部類に入る。側圧はそれほど強くないものの,その分,ヘッドバンド部分に本体の重量が乗っているようには感じられた。クッションも薄いため,長時間の利用だとこの重さをストレスに感じる人も出てくるだろう。


波形と試聴で全7.1chを徹底的に検証してみる


 といったところを踏まえて,テストに移ろう。
 2018年3月時点において,4Gamerのヘッドセットレビューでは以下のようにして実力を検証することになっている。

  • ヘッドフォン出力テスト:ダミーヘッドによる測定と試聴
  • マイク入力テスト:測定と入力データの試聴

 ヘッドフォン出力時の測定対象は周波数特性と位相特性,そして出力遅延だが,アナログ接続型ヘッドセットで遅延計測はほぼ意味がないので,今回は周波数特性と位相特性を計測する。具体的なテスト方法は「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるヘッドフォン出力テスト方法」のとおりである。

 一方,マイク入力の測定対象は周波数特性と位相特性で,こちらも具体的なテスト方法は「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法」にまとめてある。基本的には,それらを読まずともなんとなくは理解できるよう配慮しているつもりだが,気になるところがあれば,それぞれリンク先をチェックしてほしい。

 というわけで,いつものようにヘッドフォン出力から見ていきたいと思うが,4Gamerでアナログ接続型ヘッドセットのテストに使っているCreative Technology製サウンドカード「Sound Blaster ZxR」はアナログだと5.1ch出力までしか対応していない。そこで今回は,Sound Blaster ZxRで5.1chのテスト――サイドサラウンド以外――を行いつつ,テストに用いているPC,より正確にはASRock製マザーボード「Fatal1ty Z68 Professional Gen3」のオンボードサウンド機能を提供するRealtek Semiconductor製HD Audio CODEC「ALC892」によるアナログ7.1ch出力とも接続し,両方でチャネルごとの出力波形を,ダミーヘッドへ入力したデータからチェックしていくことにしたい。

 テストに当たって,インラインリモコン側のボリュームはすべて全開にしている。筆者の通例だと,計測した信号とリファレンス信号は平均音圧レベルが同じになるよう調整するのだが,Tiamat 7.1 V2ではそのままグラフ化している。
 これにより,「周波数の波形がどうか」という話だけでなく,チャネルごとのボリュームがどれくらい異なるかを把握しようというわけだ。

 ここで注意したいのは,Tiamat 7.1 V2が,バスリダイレクト機能をサポートしていないことである。
 「バスリダイレクトとは何か」という話は初代Tiama 7.1のレビュー時に済ませてあるため,詳細はそちらをチェックしてもらえればと思うが,ものすごく簡単におさらいすると,「本来サブウーファへ送られる低域信号には,サブウーファ専用の『LFE』と,サテライトスピーカー側の低域成分をまとめた『SUB』があるにもかかわらず,TiamatシリーズにはSUBをサブウーファへ送る機能がない」のである。Tiamat 7.1に引き続いてTiamat 7.1 V2でもこの仕様は変わらなかったので,Razerはこれを問題だと捉えていない可能性があるが,いずれにせよ,バス(bass,低音。より具体的に言えばSUB信号)をリダイレクト(redirect,変更)してサブウーファへ送る処理を行わないと,Tiamat 7.1 V2の低音はスカスカなものになってしまう。

Sound Blaster ZxR(上)とHD Audio CODEC(下)でそれぞれバスリダイレクトを有効化している例
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 そのため今回は,工場出荷状態で,かつ音響特性上明らかに問題のある「バスリダイレクト無効時」のほか,バスリダイレクトを有効化した「バスリダイレクト有効時」でも計測することにした。

 Sound Blaster ZxRでは専用コントロールパネルの「スピーカー/ヘッドフォン」以下にある「バス リダイレクション」にチェックを入れると有効化できる。「どの周波数帯より下の信号をSUBとしてサブウーファへ送るか」の設定,いわゆるクロスオーバー周波数設定は,必要に応じてスライダーで調整可能だ。スライダーは最小10Hz,最大1000Hzで,7〜8Hz刻みの調整が可能だが,今回はデフォルトの80Hzではなく,筆者側で調整して96Hzとしている。
 一方のHD Audio CODECではやはり専用コントロールパネルを開き,「スピーカー」タブの下にある「スピーカー設定」を選択のうえ,「低音管理を有効にします」にチェックを入れればOK。こちらはクロスオーバー周波数の設定に対応していないので,操作としてはチェックを入れるだけだ。

こちらがリファレンス波形
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 さて,本稿で示すテスト結果において,波形スクリーンショットの右に示した画像は,それぞれ「得られた周波数特性の波形がリファレンスとどれくらい異なるか」を見たものになる。
 これは,Waves製アナライザ「PAZ Analyzer」で計測したグラフを基に,4Gamer独自ツールを使ってリファレンスと測定結果の差分を取った結果だ。リファレンスに近ければ近いほど黄緑になり,グラフ縦軸上側へブレる場合は程度の少ない順に黄,橙,赤,下側へブレる場合は同様に水,青,紺と色分けするようにしてある。

 差分画像の最上段にある色分けは左から順に重低域(60Hz未満,紺),低域(60〜150Hzあたり,青),中低域(150〜700Hzあたり,水),中域(700Hz〜1.4kHzあたり,緑)中高域(1.4〜4kHzあたり,黄),高域(4〜8kHzあたり,橙),超高域(8kHzより上,赤)を示す。

 ……と,例によって前置きが長くなったが,テスト結果の考察を以下,順に行っていこう。まずはマルチチャネル出力時からだ。


■Sound Blaster ZxR接続,バスリダイレクト無効


5.1chモード,全ch同時出力
リファレンス波形を全chで一斉に再生した状態。100Hz付近を頂点とする広めの低域と,6kHz付近を頂点とした,より幅の狭く,かつ相対的な小さな高域の山が主な構成要素となる,低強高弱型のドンシャリ形状だ。8kHz以上で一気に落ち込み,12kHz付近ではリファレンスに対して20dB前後も落ちている点と,16kHz以上でもう一段落ち込むのは気になるところである
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5.1chモード,フロントLR出力
フロントLRのみ出力させた状態だが,一般的な2ch出力対応ヘッドセットではおよそ見ないような周波数特性になっており,30mmスピーカードライバーが低音を出していないのがよく分かる。出力レベルが小さいのは前述のとおり全ch計測時とボリュームを揃えているため。低域は200Hz付近より下で落ち込み,一方で500Hzから上の高域にかけて強くなるが,「6kHz付近でピークに達し,8kHz上で落ち込んでいく」のは全ch出力時と同じだ
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5.1chモード,センター/サブウーファ再生
センター/サブウーファ出力だが,バスリダイレクト無効(=SUBチャネル無効)なので,LFE信号のみの再生となる。波形は全ch出力時と似た形状になっているが,低域のピークは200Hz付近にシフトした。2.4kHzくらいにある「ドンシャリの谷」はより深く,6kHz付近の山も若干低い。ただ,8kHzより上で落ち込むのは変わらない
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5.1chモード,リアLR出力
リアLRのみ出力した状態。200Hz以下で低域が下がり始める低弱高強型になっている点と,6kHz付近がピークとなり,8kHz以上で一気に落ちていく点でフロントLRと似た傾向だ。20mmドライバーを使っているためか,フロントLR出力と比べて音量は気持ち小さい。350Hz〜3.8kHzのところの谷と1kHz付近を中心とした山が特徴的になっている
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■Sound Blaster ZxR接続,バスリダイレクト有効


5.1chモード,全ch同時出力
全ch出力したときの波形だが,バスリダイレクト無効化時と比べると,125Hz付近を境にしてその上の帯域がえぐられたかのように大きく落ち,350Hz付近を底にして,また1kHz付近に向けて少しずつ上がっていくのが分かる。前述のとおり,設定したクロスオーバー周波数は96Hzだが,これを見ると,実際のクロスオーバー周波数は150Hzくらいになっているようだ
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5.1chモード,フロントLR出力
バスリダイレクトが有効なので,SUB出力にFLFRの低音信号が送られているため,2.1ch状態で出力したときの結果だが,バスリダイレクト無効時の「目も当てられないほどの低域特性」をきちんと補正できている。125Hz付近より上でえぐったような谷が生まれているのは全ch出力時と同じ
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5.1chモード,センター/サブウーファ出力
センター信号の低音部分をSUBとしてLFEスピーカーに送っていることもあって,100HzのピークがフロントLRより大きくなっている。LFE信号を加えたことで低域がより強くなっているのだろう。250Hz付近以上の波形はフロントLRとほぼ同じ
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5.1chモード,リアLR出力
こちらも,「ベースリダイレクト無効時の波形に,100Hz付近を頂点とした低周波を加えた,2.1chのドンシャリ形状」なグラフとなっている。250Hz付近から上の波形はバスリダイレクト無効時のリアLRとほぼ同じだ
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■HD Audio CODEC接続,バスリダイレクト無効


7.1chモード,全ch同時出力
端的に述べて,Sound Blaster ZxRにおけるバスリダイレクト無効時の波形に近い。細かく見てみれば,低域のピークはSound Blaster ZxRより高めの250Hzになっていたり,その上から700Hzくらいまでの帯域では出力が大きかったりと違いはあるものの,1.4kHzから8kHzはかなり近しいと言っていいだろう。8kHz以上は評価が難しいものの,「リファレンスから20dBくらい下がっている」という点では同じという評価もできるだろう
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7.1chモード,フロントLR出力
こちらもSound Blaster ZxRの5.1chモードでフロントLR出力したときと非常に近い波形形状になっている
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7.1chモード,センター/サブウーファ出力
やはり「Sound Blaster ZxRの5.1chモードでバスリダイレクトを無効化した状態」と近い結果だ。ただ,125Hzより下の帯域における落ち方が急になっていたり,125Hzから500Hzにかけての山は凹凸が少なかったりと違いはあるので,フロントLRほどの相似性はないとも言える
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7.1chモード,リアLR出力
Sound Blaster ZxRで同条件のテストを行った場合,4kHzから8kHzが大きな山を形成していたのに対し,こちらでは同じ場所が小さくなっている。結果としてピークは1kHz付近に移動しているが,実のところ,1kHz付近の山も小さく,狭い
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7.1chモード,サイドLR出力
サイドLR出力なのでSound Blaster ZxR側の比較対象は存在しないが,リアLRとほぼ同じ波形だ
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■HD Audio CODEC接続,バスリダイレクト有効


7.1chモード,全ch同時出力
バスリダイレクトを有効化すると,無効時と比べ,300〜400Hz付近に大きな谷ができ,また低音のピークが100Hz付近で下がる。このことから,今回テストに用いているHD Audio CODECのクロスオーバー周波数は350Hz付近ではないかと推測している
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7.1ch接続,フロントLR出力
純然たるフロントLRとは別に,その低音信号をSUBとしてサブウーファへ送っている2.1ch出力時の結果だが,バスリダイレクトが有効になったことで,筆者がクロスオーバー周波数と推測する350Hz付近を境にして,それより低い帯域で山ができている。低弱高強傾向は変わらないものの,低音はかなり補強されている印象だ
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7.1chモード,センター/サブウーファ出力
バスリダイレクトが有効なので,センター信号の低音部分はSUB信号としてサブウーファに送られているが,バスリダイレクトの効果で低域はかなり小さくなっている。ピークである6kHz付近の山と比べると,ざっくり5dB前後は小さい。4kHz以上のグラフ形状はHD Audio CODECでバスリダリレクトを無効化したときのセンター/サブウーファ出力と相似形だが,350Hz付近に存在すると見られるクロスオーバー周波数周辺の谷はかなり小さくなっている
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7.1ch接続,リアLR出力
純然たるリアLRだけでなく,低音信号をSUBとしてLFEチャネルへ送っている2.1ch出力の状態になるが,クロスオーバー周波数と推測される帯域から200Hz付近までに低域の山が形成される。350Hz付近から上はバスリダイレクト無効時とほぼ相似形ながら,若干高めだ
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7.1ch接続,サイドLR出力
バスリダイレクト有効時のリアLRとほぼ同じ波形だ。クロスオーバー周波数と推測される350Hz付近からから200Hz付近にかけて低域の山を形成している。ちなみに350Hzから上はバスリダイレクト無効時のサイドLRと相似形だが,相対的に出力は若干大きい
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 こうやって並べてみると,Tiamat 7.1 V2を使ったときに生じるSound Blaster ZxRとHD Audio CODECの違いは,どちらかというと低域に出ていることが分かる。高域はそもそも8kHz以上で大きく落ち込むため,違いが出にくいというか,サウンドデバイス間にある細かな違いはTiamat 7.1 V2の仕様に吸収されてしまうのだろう。

 さて,続いては2ch2.0chモードである。
 テストに用いる信号はサラウンドのテスト時と変わらないが,ここでは当然のことながら2chステレオで再生することになる。Tiamat 7.1 V2側ではリモコン側のボタンを使って2.0chモードに固定する一方,Sound Blaster ZxRおよびHD Audio CODECではそれぞれ専用コントロールパネルからバスリダイレクト無効/有効のサラウンド出力と,純然たるステレオ出力の計3パターンずつで計測を行うことにした。


■Sound Blaster ZxR接続


Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,Sound Blaster ZxR側サラウンド出力,バスリダイレクト無効
Sound Blaster ZxRはサラウンドモード設定のまま,Tiamat 7.1 V2側では2.0chモードに設定した状態だが,両方とも2.0chモードに設定した状態との間で波形を見分けるのはかなり難しい。「強いて言えば125Hz以下が少し膨らんでいるとか,500Hz付近の形状が若干異なる」程度だ
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Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,Sound Blaster ZxR側サラウンド出力,バスリダイレクト有効
Sound Blaster ZxR側でバスリダイレクトが入るため,低域の周波数特性で大きな違いが出る。すでにお伝えしたとおり,バスリダイレクトの周波数(=クロスオーバー周波数)は96Hzなので,低域の山がより低い周波数帯域に移動し,80〜125Hz付近の低域として大きくなった。ただ,バスリダイレクトにあたってクロスオーバー処理だけでなくハイパスフィルタも入れて重低音のトリートメントを行っているのか,60Hz以下の落ち込みはバスリダイレクト無効時より急峻だ。一方,1kHz以上はバスリダイレクト無効時とほぼ近い形である
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Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,Sound Blaster ZxR側ステレオ出力
グラフは一見して,Sound Blaster ZxRのバスリダイレクト無効時における5.1chモードに近い。顕著な違いは,2kHz付近が谷にならず,6kHz付近の山がより高い点と,8〜12kHz付近がより強く,16kHz以上でより弱くなっている点だろう。500Hz以下の低域では5.1chモードと似た感じのグラフになっている
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■HD Audio CODEC接続


Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,HD Audio CODEC側サラウンド出力,バスリダイレクト無効
一言でまとめると,「Tiamat 7.1 V2とHD Audio CODECを両方とも2.0chモードにしたときとほぼ同じ」。ただ,低域の形状は若干異なっており,Tiamat 7.1 V2とHD Audio CODECを両方とも2.0chモードにすると低域で最も大きくなるのは200Hz付近だったのが,こちらだと125Hz付近へ移動している
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Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,HD Audio CODEC側サラウンド出力,バスリダイレクト有効
バスリダイレクトが有効なため,800Hz付近より低い周波数帯域の特性に違いは出ている。90〜120Hz付近や250〜500Hz付近が若干強く,90Hz以下の低域が急速に落ち込む。しかし,サラウンド出力したときのような「350Hz付近に大きな谷が生じる」ことはない。つまり,サラウンド信号が入ってきたときとステレオ信号が入ってきたときとで,Realtek Semiconductor製HD Audio CODECは周波数特性の処理に何らかの変更を加えている可能性があるわけだ
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Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,HD Audio CODEC側ステレオ出力
グラフは一見して,Tiamat 7.1 V2側2.0chモード,HD Audio CODEC側サラウンド出力,バスリダイレクト無効時よりも,Sound Blaster ZxRと接続してTiamat 7.1 V2側を2.0chモード,Sound Blaster ZxR側でステレオ出力させたときに近い。よく見ると,60〜250Hz付近にある低域が全体として高いほう(=グラフ右側)に寄っているが,違いはその程度である
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 以上,延々とグラフを並べることになってしまったが,ステレオ音楽を聴いての試聴印象結果もここで述べておきたい。
 まず伝えておく必要があるのは,Tiamat 7.1 V2の2.0chモードが「まったくよくない」ということだ。個人的には「久しぶりにひどい音を聞かされた」感が強い。低域の山が強いうえに8kHz以上の落ち込みがこれまで見たことのないほど顕著なので,弱い高域を強い低域がさらにマスクしたような状態に陥るようだ。

 Tiamat 7.1 V2のインラインリモコン上で2.0chモードを選択する限り,サウンドデバイス側で対策を行っても,試聴印象はほとんど変わらない。おそらくTiamat 7.1 V2の2.0chモードとは,バスリダイレクト無効/有効以前の問題として,ステレオ信号を全chで同時再生してしまっているのだろう。
 実際,2.0chモードに切り換えると,Tiamat 7.1 V2のインラインリモコンはマスターボリュームとマイク入力ボリュームしか調整できなかったり,Tiamat 7.1 V2をサラウンドモードに変更して全chで同じ信号を再生したときの周波数特性が2.0chモードのそれに近かったりすることからして,その可能性は高そうだ。

 いずれにせよ,Tiamat 7.1 V2の2.0chモードは,初代機から変わらず「いただけない」ということになる。

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 ただし,Sound Blaster ZxR側でバスリダイレクトを有効化し,Sound Blaster ZxR側でサラウンド出力を有効に,Tiamat 7.1 V2側では7.1chモードを有効にして2chステレオ音楽を聴いてみたところ,かなりマトモな音になった。
 さらに言えば,Tiamat 7.1 V2を7.1chモードにした状態ならインラインリモコンからチャネルごとの出力バランスを変えられるので,フロントLRとLFE(+SUB)のバランスを調整することもできる。Sound Blaster ZxRならクロスオーバー周波数も好みに変更できるので,試してみてほしい。
 クロスオーバー周波数を変更できるサウンドデバイスなら,Tiamat v2の周波数特性を基準にして,クロスオーバー周波数は80Hzから120Hzの間にしておくのがいいと思う。

 なお,具体的な試聴印象は,バスリダイレクトを有効化した状態のフロントLRにおける波形に近い。8kHz以上の超高域はたしかに“いない”感じなのだが,5〜8kHz付近の「高音が出ていると感じやすい高域」が強いので,超高域の大きな落ち込みはそれほど知覚されない,と言ったほうが正確だろうか。
 また,350Hz付近が谷になっているため,中低域はすっきりしており,2.0chモードを選択したときのようには高域をマスクしてしまったりしない。

 Sound Blaster ZxRとHD Audio CODECを比較してみると,方向性は似ているものの,前者のほうがツヤがあって,よりオーディオ的に聞こえる。音圧が高いのが効いているのだろう。
 また,Sound Blaster ZxRで96Hzにクロスオーバー周波数を設定したとき,80Hzあたりの山はHD Audio CODECと比べても大きくなるので,低域の「きちんと再生される具合」もSound Blaster ZxRのほうが良好だ。HD Audio CODECと組み合わせる場合は,インラインリモコン側の出力設定でフロントLRを「3時」くらい,SUBを全開にするといいと思われる。

 では肝心要のリアルサラウンドはどうだろうか。
 まずはSound Blaster ZxRと接続し,バスリダイレクトを有効化して試聴を行った。

フロントとセンター,サイド,リアの各スピーカーを傾けて取り付け,スピーカー同士の位置も実際のサラウンドスピーカーと近くなるようにずらして配置することで,Tiamat 7.1 V2はサラウンド感を得やすくなっている
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 グラフ上では高域が落ち込んでいるため,サラウンドの定位を把握できるのか不安だったが,結論から言えばそれは杞憂で,定位はきちんと分かる。
 2ch出力対応のヘッドセット(やヘッドフォン)でバーチャルサラウンドサウンドを実現するための「バーチャライゼーション」においては,音の指向性を確保するため,たっぷりの高域成分が間違いなく必須だ。ではなぜTiamat 7.1 V2では高域が落ち込んでいるのにサラウンド感があるのだろう?

 Tiamat 7.1 V2のサラウンド感がある理由は,エンクロージャ内に配置される計10基のスピーカードライバーの存在を「8kHz以上の超高域再生能力を欠いた,安価なマルチチャネル出力対応サラウンドスピーカーセット」に喩(たと)えると分かりやすい。
 より高品位なマルチチャネル出力対応サラウンドスピーカーセットと比べて品質は劣るかもしれないが,きちんとサラウンドに聞こえるように設置してあれば,きちんとサラウンドサウンドとして知覚できるのだ。Tiamat 7.1 V2のスピーカードライバー配置は,まさにそんなイメージである。

 テストにあたっては今回も「Fallout 4」と「Project CARS」を用いているのだが,前者では,視界前方30度くらいのところにヘリコプターを見据えると,きっちり前方30度くらいのところから音が聞こえる。高域がなくてもスピーカードライバーの配置と角度を最適化することでフロントスピーカーの代わりは務まるという好例と言っていいだろう。

 また,ヘリコプターの周囲をぐるっと回ってみると,サイドサラウンドを利用できないSound Blaster ZxRでも,出力はSound Blaster ZxR側で5.1chにダウンミックスされるため,「サイドサラウンドチャネルを利用できていないがゆえのデッドポイント」のようなものを感じることなく,キレイに音がつながるのを聞き取れた。HD Audio CODECの7.1ch出力はいわずもがなだ。
 テスト対象のゲームタイトルを増やしていけば,「Sound Blaster ZxRでサイドサラウンド出力に対応していない」問題が顕在化し,音のつながりが悪くなる可能性もゼロではないものの,ヘッドセットのエンクロージャ内における各スピーカードライバー間の物理的な距離は大したものでもないので,あまり神経質になることでもないと思われる。

 低域は,Sound Blaster ZxRで96Hzにクロスオーバー周波数を設定してテストしている限り,それほど強くは感じない。「しっかり存在するものの,前には出てこない」印象だ。これに対してHD Audio CODECの場合,クロスオーバー周波数は(おそらく)350Hz付近にまで上がるため,音の重心も高くなり,俗に言う「軽い音」に聞こえる。重低音は存在すれども相対的に小さめなので,どうしても低弱高強に聞こえるのだ。

Sound Blaster ZxRの場合,専用コントロールパネルからサブウーファーゲインにチェックを入れることで,SUBチャネルを増強できる
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 Sound Blaster ZxRなら,専用コントロールパネルから「サブウーファー ゲイン」を有効にすると俄然SUBチャネルが強くなるので,ぜひ試してみてほしい。ただ,設定すると低域と高域のバランスが崩れてしまう恐れはあるため,試す場合は「Tiamat 7.1 V2側のインラインリモコンでSUBボリュームを下げることでバランスを調整する」というのを覚えておきたい。

 一方,Project CARSだと,ゲーム側が低域から中低域の成分を非常に多く含んでいることもあり,何かバランス設定を弄ったりしなくても,相応に低音は出る。ただ,重低域はやはり「いるけれども前には出てこない」印象だ。
 定位はFallout 4同様できちんとしている。とくにフロントLRとリアLRによる前方および後方の定位感は「リアルサラウンドならでは」という感じがある。また,高域はグラフで見たほどひどい落ち込み方には感じなかった。

 バスリダイレクトは,少なくとも今回試した2種類のサウンドデバイスなら有効にでき,効果も確認できる。ただし,どういうわけかステレオ音源を採用したオープニングムービーだけはバスリダイレクトが有効にならず,サブウーファからは音が一切出なかった。どうもサラウンドコンテンツのときしかバスリダイレクトは有効になっていないようだ。
 音質自体は,バスリダイレクトで設定したクロスオーバー周波数にもよるが,Sound Blaster ZxRで96Hzに設定すると,ギアチェンジの音や縁石に乗り上げたときなどの超重低音も聞こえた。ただ,低音の重心はそれでも依然として高く,低弱高強な印象は拭えない。


マイクはHD Audio CODECでの利用に最適化!?


こちらがマイク入力テスト用のリファレンス波形
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 テストの最後はマイク入力である。ここでもSound Blaster ZxRに接続した場合とHD Audio CODECに接続した場合の2パターンで検証を行った。結果は以下に示したとおりで,見方は出力時と同じだが,マイク入力は位相特性もチェックすることになるので,その点はご注意を。前述のとおり,テスト方法の詳細は別途まとめてあるので,興味のある人はそちらも参考にしてほしい。

Sound Blaster ZxRとの接続時。珍しく右肩下がりの周波数特性になっている。要するに低強高弱の音質傾向だ。8kHz以上でガクンと落ち込むのも見てとれる。一方,プレゼンス(※)から高域にかけてとなる2.5〜6kHzは相対的に高い。位相は問題なしだ
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HD Audio CODECとの接続時。低域を切って,プレゼンスから高域にかけてを持ち上げてあるという,マイク入力テストでよく見る感じの周波数特性になっている。下は,500H付近から緩やかに落ち込み,125Hz以下で急速に落ち込んでいく。上は1.8〜5kHzくらいに山があり,6kHz以上は相対的に弱い印象だ。こちらも位相特性に問題はない
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※2kHz〜4kHz付近の周波数帯域。プレゼンス(Presence)という言葉のとおり,音の存在感を左右する帯域であり,ここの強さが適切だと,ぱりっとした,心地よい音に聞こえる。逆に強すぎたり弱すぎたりすると,とたんに不快になるので,この部分の調整はメーカーの腕の見せどころとなる。

 まず言えるのは,Sound Blaster ZxRに接続したときとHD Audio CODECに接続したときとでは,得られる周波数特性がまるで異なるということだ。同じマイクとは思えないくらいだが,Sound Blaster ZxR側のマイク入力周りにイコライジングが入っていないことは確認済みなので,HD Audio CODEC側で周波数特性をフィルタリング(≒イコライジング)して弄っている可能性が高い。

 実際に声を聴いてみると,HD Audio CODECと比べて,Sound Blaster ZxRとの接続時のほうがはるかに低域に存在感があり,声の張りも感じられる。ただ,ノイズも多い。Sound Blaster ZxR側でマイク入力時のノイズリダクションを有効化したほうがいい印象である。
 逆にHD Audio CODECとの接続時は,声の張りこそ感じられないものの,チャット相手が聞き取りやすく,かつ目立ったノイズもない印象だった。

 そういうわけで,「2つのテスト条件であまりに傾向が異なるため,マイクの評価をしづらい」というのが正直なところだが,HD Audio CODECにおける極端なイコライジングのかかり方からして,RazerはTiamat 7.1 V2を,HD Audio CODECと組み合わせて使う前提で最適化している可能性が高いと思う。その意味では,HD Audio CODECと組み合わせたときの評価のほうが,マイク性能の実態には近いはずだ。


どこまでもニッチだが,必要な人にとっては唯一無二の選択肢


製品ボックス
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 まとめよう。外観はイマドキっぽくなったが,中身は相変わらず尖ったまま,というのが,Tiamat 7.1 V2に対する率直な感想だ。とくに2.0chモードが「全chフルボリューム,調整なしの鳴らしっぱなし」で聴くに堪えないにもかかわらず放置されているとか,快適に使うためには必須となるバスリダイレクト機能に関する配慮が依然として何もないとか,「サラウンドに聞こえていればいい」と言えばそうなのだが,高域特性に優れた最近のゲーマー向けヘッドセットと比べると高域が明らかに数段落ちるとかいったあたりは,あまりに潜在的なユーザーをふるいにかけすぎではないかと思う。

 一方で,リアルサラウンドらしい前方定位のよさはさすが。また,マザーボードのオンボードサウンド機能に最適化されているとしか思えない音質傾向は,せっかくマザーボードのアナログ7.1chサラウンドサウンド機能があるのだから,ぜひ積極的に活用したいという場合には,唯一無二の体験をもたらしてくれるものであることにも,疑いの余地はない。

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 どこまでもニッチで,しかも実勢価格は2万4700〜2万7000円程度(※2018年3月31日現在)と安価でもないため,ほとんどの4Gamer読者には勧められないが,ごくごく一部のユーザーにとっては他に代えがたい製品。Tiamat 7.1 V2というのは,そういうヘッドセットである。

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