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グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]
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印刷2023/07/31 12:00

レビュー

グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]

 今回は,数々のゲーマー向けヘッドセットを投入してきた「Logicool G」(日本以外ではLogitech G)から登場した「Logitech G PRO X 2 LIGHTSPEED Wireless Gaming Headset」(国内ではロジクール G PRO X 2 LIGHTSPEED ワイヤレス ゲーミング ヘッドセット,以下 PRO X2 LS)を取り上げよう。

Logitech G PRO X 2 LIGHTSPEED Wireless Gaming Headset
メーカー:ロジクール
税込直販価格:3万4650円(※2023年7月31日現在)
画像集 No.002のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]

 以前に取り上げたLogitech GのPROシリーズヘッドセットには,ワイヤードヘッドセット「PRO X Gaming Headset」(以下,PRO X)と,そのワイヤレス版「Logitech G PRO X LIGHTSPEED Wireless Gaming Headset」(関連記事,国内ではロジクールG PRO X WIRELESS LIGHTSPEEDゲーミングヘッドセット,以下 PRO X Wireless)がラインナップされていた。PRO X2 LSは,その後継機種である。
 Logitech G製品らしく相変わらずの多機能っぷりだが臆することなくじっくり見ていこう。

PRO X2 LSの製品ボックス(左)と同梱物(右)。右写真の左上から時計回りに布製の「ソフト収納バッグ」,ヘッドセット本体,「USB-A LIGHTSPEEDワイヤレスレシーバー」,USB-A - USB-Cケーブル,アナログ接続ケーブル,マイクブームが含まれている
画像集 No.003のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー] 画像集 No.004のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]


新素材「グラフェン」をスピーカー振動板に採用


PRO X2 LSのブラックモデル
画像集 No.005のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]
 PRO X2 LSは,Logitech Gが得意とする,独自方式ワイヤレスとBluetooth,さらにアナログ接続が可能なヘッドセットだ。接続方式はそれぞれ排他であり,ワイヤレスとBluetoothを同時接続はできないが,多様な接続に対応しているのは利点と言えよう。
 「PRO」シリーズのひとつであるPRO X2 LSは,eスポーツゲーマーの協力を得て設計されているのがウリで,Logitech Gのヘッドセットでもハイエンドに位置づけられる製品だ。今回,試用したのはホワイトモデルだが,ほかにブラックのモデルもラインナップされている。

グラフェン製振動板のイメージ
画像集 No.021のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]
 先代であるPRO X Wirelessからの大きな変更点は,50mm径スピーカードライバーの振動板の素材にグラフェンを採用したことにある。グラフェンとは,2004年に初めて作られたもので,炭素原子がハニカム(六角形)状に結びついてシートになった素材だ。これをスピーカーに使用すると,非常に軽いので少ないエネルギーで駆動でき,高周波再生能力に優れた,歪みが少ない音質傾向を実現できると言われている。
 Logitech Gは,PRO X2 LSにおけるスピーカー素材として,薄いグラフェン素材を多数重ねて作った振動板を採用することによって,「音の解像度が向上し,ゲーム中で鳴る多数の音を聞き分けやすくなっている」と主張している。このあたりは,なかなか計測しにくい部分なので,のちほど試聴で確かめていこう。

 また,バッテリー駆動時間が,PRO X Wirelessの公称20時間から,最大50時間と倍以上に延びたのも特徴である。資料に言及はないが,ヘッドセット内部のプロセッサやバッテリーの進化だけでなく,低エネルギーで動作するグラフェンの利点が,駆動時間の延長に効果を発揮しているのかもしれない。
 さらに,Logitech G独自方式の2.4GHz無線接続であるLIGHTSPEEDで接続した場合,ワイヤレス通信の範囲が先代の15mから,30mと倍に伸びたのも特徴だ。

ワイヤレスレシーバー。USB Type-Aポートの反対側にある黒い端子がAUX端子だ
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 PCとのLIGHTSPEED接続時に使用する「USB-A LIGHTSPEEDワイヤレスレシーバー」(以下,ワイヤレスレシーバー)が,3.5mmミニピンのAUX入力端子を備えているのも面白い特徴である。
 AUX入力端子にオーディオ機器をアナログ接続することで,PCからの音とミックス(MUXという)して聞けるわけだ。実際動作を確認してみると,AUX入力端子に接続した機器の音声は,PC側に送られることなく,LIGHTSPEEDワイヤレスレシーバーから直接,PRO X2 LSに送られる仕組みだった。そのため,PC側での録音はできない。実際には,スマートフォンをアナログ接続して,音楽をヘッドセットで再生するといった用途を想定しているものと思われる。


ミニマルだがしっかりした作りのヘッドセット本体


 それでは,PRO X2 LSの外観を見ていこう。

画像集 No.007のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]

 PRO X2 LSの外観は,先代のPRO X Wirelessと大きく変わっておらず,ミニマルでしっかりした作りとなっている。剛性がしっかりしており,カチッとしているのだ。
 ホワイトモデルはツヤ消し白色と銀色を基調としており,白色も原色ではなく,オフホワイトで品がいい。一点だけ不思議なのは,マイクブームの先端が黒色である点だ。Logicoolによると,マイクブームの先端が白色だと視野の隅に入って邪魔になることがあるため,あえて目立たない黒色にしているとのこと。

首像に装着した状態
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353gの重量は,先代よりも若干軽くなった
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 公称本体重量は,駆動時間が倍に伸びたにも関わらず先代の370gより若干軽くなった345g。実測重量はマイク込みで約353gだった,マイクの重量は実測約9gなので,マイクを除いた重量はほぼ公称値どおりと言っていい。

 エンクロージャのサイズは,実測約80(W)×100(D)×55(H)mmで,イヤーパッドの厚みが実測約20mmだった。イヤーキャップには面取りされた銀色の円形パーツが取り付けられており,その中心にLogitech Gの「G」ロゴがエンボス加工されている。
 イヤーキャップ上部には,左右にひとつずつスリットが開いているが,開放型というわけではない。

エンクロージャは,PRO X Wirelessを踏襲したシンプルなデザインだ(左)。LEDイルミネーションもない。イヤーキャップ上部のやや後ろ側にスリットがある点も,PRO X Wirelessと同じである(右)
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右エンクロージャにある孔は,アナログ入出力端子である
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 操作ボタンやインタフェース類は,アナログ入出力端子だけが右エンクロージャ側にあり,それ以外は,すべて左エンクロージャにまとめられている。なお,音量調整ダイヤルは,Windowsシステム音量と連動する仕組みだ。

左エンクロージャのボタンやインタフェース類。手前側(左)から順に,マイクブーム接続端子,LIGHTSPEED/Bluetooth切り替えボタン,USB Type-Cポート,マイクミュートボタン,音量調整ダイヤル,電源スイッチの並びだ
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 電源スイッチ部分にはLEDが埋め込まれているが,常時点灯するわけではない。電源オン時や充電中は緑色に点灯し,LIGHTSPEED接続時は薄い青色に変わった後消灯する。Bluetooth接続時は濃い青色に,バッテリー残量が10%以下の場合,赤色に点灯した後消灯するといった具合だ。
 マイクミュートボタンは,押し込んだ状態でミュート解除となり,出っ張った状態で赤く塗られた出っ張り部分が見えている状態はミュートを示す。LIGHTSPEED/Bluetooth切り替えボタンは,短押しでLIGHTSPEEDとBluetooth接続の切り替えとなり,長押しでペアリングを行う。

合皮製イヤーパッド(左)と布製イヤーパッド(右)
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 外周に引っかけて取り付けるタイプのイヤーパッドは2種類付属している。出荷状態で取り付けられているのは「低反発合成皮革製イヤーパッド」で,製品ボックスに含まれているのが「交換用低反発クロスイヤーパッド」とのこと。
 合皮素材は,イヤーパッド部分全体がオフホワイトで,布製素材はグレーになっていた。どちらも黒色のスピーカーネットは比較的厚めで,大きな「L/R」の文字が,印刷ではなく貼られている。

 イヤーパッドを取り外すと,エンクロージャの中央に数多くの空気孔が空けられた,黒色で直径実測約50mmのプラスチック製スピーカーグリルが現れる。グリルの奥には,グラフェン素材を用いたスピーカードライバーが設置されているはずだが,分解しないと実物は見えない。

右イヤーキャップからイヤーパッドを取り外した状態
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 ステレオ感を確保するため,スピーカードライバーは,グリルごと前方に傾斜がついた状態で取り付けられている。また,グリルのすぐ上には黒い紙のような素材が貼られた空気孔と思われる孔が3つ開けられていた。音響の微調整を行うためのものだろう。

 エンクロージャとヘッドバンドをブリッジするアームは,イヤーキャップ左右両端の2点留めで,目視で上下方向に45度ほど,スライダーとの接合部分は前方に約100度,後方に約15度くらい回転する。開きにできるタイプだ。
 エンクロージャとアームの接合部はプラスチックだが,アームとスライダーはアルミニウム合金で高級感がある。

エンクロージャ部分は前後に90度ほど回転する
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 スライダー部分の表には溝状の,裏側にドット状の目盛が9つ用意されており,9段階で長さを調整できる。クリックは軽く,片手での調整もたやすい。イヤーキャップと接続されたオーディオケーブルは,カールしてヘッドバンド部分に接続されていた。

ヘッドバンドのスライダーを伸び縮みさせた様子
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 頭頂部に「PRO」のロゴがエンボス加工されたヘッドバンドは,スライダーとの接続部以外,すべて合皮製のカバーで覆われている。ヘッドバンド部分の幅は実測約43mmで,クッションが内部に敷き詰められていて,厚みは実測約10mmくらいだ。

ヘッドバンドの表面には,「PRO」のロゴがエンボス加工されている。バンドの幅は実測約43mm,厚みは約10mmだ
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 マイクブームはマイク部分と端子部分を除き実測約88mm。柔軟に曲がるので,狙ったところにピンポイントで配置できるのはLogicool Gらしいところだ。接続部分にロックはないが,ヘッドセットに差し込む端子がU字型でしっかり接続でき,簡単に抜け落ちる感じはしない。

着脱可能なマイクブーム
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 マイクブーム先端に取り付けられたスポンジ素材のポップノイズフィルターは,実測サイズが25×15mmだ。フィルターを取り外すと,実測約26×10×6mmのマイク部分が現れる。
 内部のマイク本体は,Logicool Gによると単一指向性のカージオイド(心臓型)コンデンサマイクで,サイズは直径が約6mm,周波数特性は100Hz〜10kHzとのこと。低周波にハイパスフィルターをかけて,高周波はUSB接続の制限で狭まっているような仕様だ。

ポップノイズフィルターを外してマイク部分を確認してみた。左が口側で,右の十字型が外側だ
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 付属のアナログ接続用ケーブルは,両端とも3.5mmのストレート4極ミニピンで,長さは端子除き実測約182cm,太さは実測約2mm程度だ。ごく普通のゴム素材でシールドされた,ごく普通のアナログオーディオケーブルだ。
 PRO X2 LS本体の電源をオフにした状態で,このケーブルを右イヤーキャップにある4極3.5mmミニピン端子に接続すると,PRO X2 LSをアナログヘッドセットとして利用できる。電源オフで動作するので,アナログ接続時はピュアなアナログヘッドセットと考えていい。なお,電源オンの状態ではアナログ接続できないので注意してほしい。

 もう1本のケーブルであるUSB-A - USB-Cケーブルは,実測約183cm,太さは実測約3mm。充電およびファームウェアアップデート用で,PCと接続してもUSBサウンドデバイスとして認識されることはない。
 ちなみに,本機は充電中もワイヤレス接続したまま,サウンドを再生できる。

 装着してみた印象だが,側圧は強すぎず弱すぎず適度な圧に調整されており,ヘッドバンドのこれまた強すぎない圧でバランスを取っているように感じる。顔を振ると若干揺れるが,ずれて装着し直すはめにはならない。カチッとした装着感のわりにストレスが少ない印象だ。

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 肌に実際触れるイヤーパッドだが,合皮素材のイヤーパッドは気密性が高く,低域の音が抜けにくい(=低域が弱くならない)音響優先のイヤーパッドだ。そのため,どうしても夏場などは,人によって蒸れやすかく感じることもあるだろう。
 もうひとつの布素材イヤーパッドも,布系としては気密性が高めのベロア素材を用いているため,蒸れの問題はあまり解決しない。ただ,イヤーパッドのベロア素材は肌当たりがよく,チクチクしないので,柔らかい布素材のイヤーパッドが好きならこちらを選ぶといいかもしれない。
 一般論として,布素材は気密性が高くても合皮素材より低域の音抜けが生じやすいので,テストで音を聞いてみるのがいいだろう。

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 PCとUSB接続するLIGHTSPEEDワイヤレスレシーバーは,端子を除いたサイズが実測約37×19×9mmで,重量は実測約7g。ツヤ消し白色で,接続すると黄緑色に点灯する円形のLEDが天面にあり,その下に「PRO X 2」と製品名がエンボス加工で入っている。
 USB端子と逆側に,MUX用の3.5mmステレオ入力端子があるのは先述したとおりだ。

 PRO X2 LSの主な仕様をまとめておこう。

●PRO X2 LSの主なスペック
  • 基本仕様:2.4GHz帯独自方式ワイヤレス,Bluetooth,アナログワイヤード接続対応,密閉型エンクロージャ採用
  • 公称本体サイズ:176(W)×95(D)×189(H)mm
  • 公称本体重量:約345
  • 接続インタフェース:ヘッドセット本体 USB Type-C(充電およびファームウェア更新用),マイク入力端子,4極3.5mmミニピンアナログ入出力端子
    LIGHTSPEEDワイヤレスレシーバー USB Type-A,3極3.5mmミニピンアナログ入力端子
  • 搭載ボタン/スイッチ:LIGHTSPEED/Bluetooth切り替えボタン,マイクミュートボタン,音量調整ダイヤル,電源スイッチ
  • バッテリー駆動時間:最大50時間
《ヘッドフォン部》
  • スピーカードライバー:50mmドライバー(グラフェン)
  • 周波数特性:20Hz〜20kHz
  • インピーダンス:38Ω
  • 出力音圧レベル:108dB±3dB
《マイク部》
  • 方式:エレクトレットコンデンサ型
  • 周波数特性:100Hz〜10kHz
  • 感度:−39dB
  • インピーダンス:未公開
  • S/N比:未公開
  • 指向性:単一指向性
  • ノイズキャンセリング機能:あり(PC側でのソフトウェア処理)



WindowsからPRO X2 LSはどう見えるか


 Windowsのサウンド設定では,PRO X2 LSはどのように認識されており,サンプリングレートや量子化ビット数といった音の解像度はどのくらいなのかを確認しよう。

※Windows 11の場合,OSの「設定」アプリから「システム」→「サウンド」を選択。画面下のほうにある「詳細設定」欄の「サウンドの詳細設定」をクリックすると,旧型のサウンドコントロールパネルを表示できる

 LIGHTSPEED接続時,スピーカープロパティではひとつの「スピーカー」として表示されている。デバイス名は「PRO X 2 LIGHTSPEED」だ。

再生タブに「スピーカー PRO X 2 LIGHTSPEED」がある。チャットとオーディオに分かれてはいない
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 スピーカープロパティの「詳細」タブで解像度を確認すると,16bitの48kHzに固定されていて,変更はできない。

PRO X2 LSのプロパティ
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 サウンド→再生タブ→構成をクリックすると,「スピーカーのセットアップ」でオーディオチャンネル数が確認できる。Windowsではステレオ出力の製品も多いが,PRO X2 LSは7.1ch出力に対応していた。

「スピーカーのセットアップ」で見ると,7.1chサラウンドスピーカーとして認識されている
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 マイクのプロパティも見ておこう。LIGHTSPEED接続時,デバイス名はやはり「PRO X 2 LIGHTSPEED」となっている。詳細タブで確認できるマイクの解像度は,すべて1チャンネル(モノラル)/16bitで,サンプリングレートが16kHz,44.1kHz,48kHzの3パターンから選べる。初期値は48kHzだ。

PRO X2 LSのマイクにおけるプロパティ
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Bluetooth接続状態でのPRO X2 LSのプロパティ
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 PCとBluetooth接続した状態も確認しておこう。再生タブで確認すると,デバイスは「ヘッドホン」と「ヘッドセット」(オーディオ再生とチャットボイス再生)に分かれている。Bluetooth接続ヘッドセットとしては標準的な仕様だ。

 Bluetooth接続時,オーディオ再生を行うヘッドホンデバイスの詳細設定は,初期値で2ch/16bit/44.1kHzで,LIGHTSPEED接続時の48kHzよりもサンプリングレートが低く,CD品質だ。
 一方で,チャットボイスを再生するヘッドセットデバイスの詳細設定は,1ch/16bit/16kHzであった。標準的なBluetooth用チャットデバイスの仕様と言っていいだろう。
 なお,PRO X2 LSはBluetooth 5.3に対応しているが,筆者のテストPCで使用しているBluetoothアダプタは,Bluetooth 5.0までの対応となっている。そのため,PCで使用するBluetoothの世代や接続方式が異なれば,異なる解像度になる可能性もあることをお断りしておきたい。

Bluetooth接続時におけるヘッドホンデバイス(左)とヘッドセットデバイス(右)の詳細設定
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PRO X2 LSに関わるG Hubの機能を確認


G Hubの初期画面。PRO X2 LSの画像をクリックすると詳細な設定ページに移り,右下の「デバイス設定」アイコンをクリックすると,ハードウェアの設定画面に移動する
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 Logicool G製品におけるウリのひとつであるソフトウェア部分も見ていこう。
 PRO X2 LSは,同社製ゲーマー向け製品共通の統合設定ソフト「Logicool G Hub」(以下,G Hub)を使って設定できる。PCにG Hubをインストール後,LIGHTSPEEDワイヤレスレシーバーをPCのUSB Type-A端子に接続すると,LIGHTSPEED接続時にヘッドセットを利用できるようになる。ただし,Bluetooth接続時やアナログ接続時は,G Hubの機能を利用できない。

初回起動時,イントロ画面が表示され,イントロ画面表示中にEQ設定の選択,サラウンドやBLUE VO!CEの有効化,マイクテストなどを行える
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 画面の左端でヘッドフォンアイコンをクリックすると,ヘッドセットの基本的な設定を行う「ヘッドフォン」設定画面が左ペインに現れる。ヘッドフォン設定時,右ペインにはグラフィックイコライザが表示され,左ペインで「音響」や「サラウンドサウンド」のタブをクリックすると,ヘッドフォン設定の切り替えを行う仕組みだ。

ヘッドフォン設定の画面
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 音響タブでは,ヘッドフォン出力レベルを変更する「システム音量」,マイク入力レベルを変更する「マイク」,マイクで集音された自分の声,いわゆる「サイドトーン」をリアルタイムで確認するときの音量を調整する「側音」の設定がある。

 左ペインの下側にはイコライザ(EQ)プリセットが並び,ここで選択したEQプリセットが適用される仕組みだ。図は「FPS」プリセットを選択したところで,右ペインのグラフィックイコライザに反映されている。プリセットの追加・削除・複製などひととおりのファイル管理も可能だ。

「FPS」EQプリセットを選択した状態
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プロファイルの切り替えメニュー
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 画面右上のプルダウンメニューでは,PRO X2 LSのプロファイルを切り替えられる。G Hubが自動でPCにインストールされているゲームを検出して,プロファイルのリストを作成するようだ。ただ,各ゲームごとのプロファイルの中身は初期値のままなので,自分で調整する必要がある。

 左ペインで「サラウンドサウンド」に切り替えて,「サラウンドサウンドを有効にする」にチェックを入れると,「DTS Headphone:X 2.0」ベースのサラウンドサウンドが有効になり設定が行える。

サラウンドサウンド設定の画面
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 サラウンドサウンドの設定では,PCゲームなどマルチチャンネルコンテンツを再生するときは,「マルチチャンネル サラウンド モード」で,音楽などステレオコンテンツは,ステレオ専用「DTSスーパーステレオモード」で設定を行う。
 右ペインは,DTS Headphone:X 2.0における仮想7.1chスピーカーの各チャンネル音量を調整する設定に変わる。


聞き取りにくかった音や聞き逃していた音を拾えるヘッドフォン


 それでは,PRO X2 LSのテストに進もう。
 PRO X2 LSはUSB経由でのLIGHTSPEEDワイヤレス接続,Bluetooth接続,そしてアナログ有線接続が可能なヘッドセットなので,計測テストは,いつもどおりPCで行っている。そのため,リファレンス機材となるデスクトップPCにPRO X2 LSをLIGHTSPEEDワイヤレスレシーバー,筆者所有のBluetooth 5.0アダプタまたはサウンドカードの「Sound Blaster ZxR」経由で接続して,以下の2種類の検証を行う。

  • ヘッドフォン出力テスト:ダミーヘッドによるヘッドフォン出力の遅延・周波数特性計測と試聴
  • マイク入力テスト:マイク入力の周波数特性および位相計測と試聴

 ヘッドフォン出力時の測定対象は,周波数特性と出力遅延の2点で,具体的なテスト方法は,「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるヘッドフォン出力テスト方法」にあるとおりだ。
 一方,出力遅延のテストに用いるオーディオ録音&編集用ソフト「Audacity」は,今回試験的に執筆時最新版であるバージョン3.3.3を使用している。過去のテストと同様に,WASAPI排他モードでテストするとテスト時エラーが出て計測できない問題が本バージョンでも確認されたため,今回もDirectSound APIを用いたテストのみとなる。
 マイク入力の測定対象は,周波数特性と位相特性で,こちらも具体的なテスト方法は「4Gamerのヘッドセットレビューなどにおけるマイクテスト方法」を踏襲した。

 まずは,USB接続型ヘッドセットで気になる遅延の計測結果から。ソニーのワイヤレスヘッドセット「INZONE H9」のテストで導入したやり方を踏襲し,独RME製オーディオインタフェース「Fireface UCX」の設定で内部遅延を変更して,一番遅延が少ない結果が得られる値に設定したうえで計測を行った。そのため,INZONE H9以前のテスト結果と単純比較はできないことをお断りしておく。
 ちなみに,PCIe接続のSound Blaster ZxRは,Fireface UCXより内部遅延が大きい。今回は,EPOSのゲーマー向けアナログ接続型ヘッドセットである「GSP 600」をFireface UCXとアナログ接続した状態を基準として,PRO X2 LSのLIGHTSPEED接続およびBluetooth接続の遅延を比較する。Fireface UCXで設定した内部遅延は,PRO X2 LSとGSP600+UCXのどちらも64samplesに設定した。今回はこの値が一番速かったからである。その比較結果をで示そう。

画像集 No.048のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]

 LIGHTSPEED接続でサラウンドオフ時が約62.7msで,サラウンドオン時が約81.1ms。Bluetooth接続時は大きく遅延して約257msとなった。Bluetooth接続は,Bluetoothアダプタの世代という面もあるので,あくまで参考程度と考えてほしい。
 そのうえで,LIGHTSPEEDの遅延は決して大きくはないが,最近のワイヤレスヘッドセットでよく見る超低遅延系ほどではなく,それ以前によくあった程度の遅延というところか。とは言え,30回のテスト結果を見て分かるとおり,遅延の程度が非常に安定しているのは,Logicool Gらしくていい。

ヘッドフォン出力品質テスト用のリファレンス波形
画像集 No.049のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]
 次に,PRO X2 LSの周波数特性を見ていこう。ヘッドフォン出力時の周波数特性は,Waves製アナライザ「PAZ Analyzer」で計測したデータそのものと,今回は趣向を変えて色分け画像ではなく,計測データとリファレンス波形を1枚の画像に重ねたもので示す。本稿における音域の呼び方は以下のとおり。

  • 重低域:60Hz未満
  • 低域:60〜150Hzあたり
  • 中低域:150〜700Hzあたり
  • 中域:700Hz〜1.4kHzあたり
  • 中高域:1.4〜4kHzあたり
  • 高域:4〜8kHzあたり
  • 超高域:8kHzより上

 G HubのEQは,フラット(≒EQバイパス)のプリセットを選び,サラウンドもオフで計測した。今回のレビューはテスト項目も多いので,個別のEQプリセットの計測は行っていない。また,Bluetooth接続時はG Hubによる設定変更ができないので,とくになにもせずそのまま計測している。

 まずは合皮製イヤーパッドとLIGHTSPEED接続の結果から。

合皮製イヤーパッド,LIGHTSPEED接続,EQ=フラット,サラウンド無効の出力特性。赤線がリファンレンス波形
画像集 No.051のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]

 低域と高域に山があるドンシャリタイプだが,差分を見ると分かるように,低域と高域の山は,同じくらいの高さになっている。低域の山の頂点は80Hz付近で,そこからなだらかに落ちていく。180Hz付近から1.8kHzくらいまではかなりフラットに近いが,耳に痛い帯域である2kHzが少し落ち込んでいて,ここが一番深い谷になっている。高域は,5〜8kHzくらいが頂点で,そこからなだらかに落ち込んでいく。なお,14kHz付近から上の帯域はほとんど存在しないが,計測した部屋の特性によるものなので,気にしなくていい。

 次は,合皮製イヤーパッドでアナログワイヤード接続に変えた状態を計測してみよう。

合皮製イヤーパッド,アナログ接続,EQ=フラット,サラウンド無効の出力特性。赤線がリファンレンス波形
画像集 No.053のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]

 リファレンスの赤線と見比べると分かりやすいが,高域の山のほうが低域の山よりも高い。低域の山の頂点が80Hz付近というのは変わらないが,LIGHTSPEED接続よりも,500Hz付近までなだらかに落ち込んでいる。2kHzが一番深い谷なのは同様,高域のピークは5〜7kHzくらいに少し狭まって見える。中域も,LIGHTSPEEDほどフラットではない。つまり,LIGHTSPEED接続時は何らかの周波数補正がかかっている可能性が高いだろう。超低域と超高域の落ち込み方は,LIGHTSPEED接続と同じだと推測している。

 ということで,合皮製イヤーパッド装着時LIGHTSPEED接続と,アナログ接続の周波数特性の差分を取ってみた。

合皮製イヤーパッド,LIGHTSPEED接続とアナログ接続の差分画像。赤線がアナログ接続
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 やはり100〜300Hzくらいは,アナログ接続のほうが強く,逆に80Hz以下はLIGHTSPEED接続が少し強い。加えて600Hzと3kHzあたりもLIGHTSPEED接続がわずかに強く,4kHz以上は若干アナログ接続が強い。ようするに,アナログ接続のほうが,若干ではあるものの低弱高低だといえる。

 合皮製イヤーパッド装着時のBluetooth接続はどうだろう。

合皮製イヤーパッド,Bluetooth接続の出力特性。赤線がリファンレンス波形
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 こちらも波形はLIGHTSPEEDに近いが,低域の山より高域の山が若干高い。180Hz付近から1.8kHzまでが割とフラットで,2kHzが谷底なの点や,高域の山が5〜8kHzくらいなのもLIGHTSPEEDと同様だ。
 LIGHTSPEED接続とBluetooth接続の差分も見てみよう。

合皮製イヤーパッド,LIGHTSPEED接続とBluetooth接続の差分画像。赤線がBluetooth接続
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 一見ほぼ同じに見えるが,Bluetooth接続は,高域と低域の山がLIGHTSPEED接続よりもわずかに低いのが分かる。しかし50Hz以下になると,若干Bluetooth接続のほうが強い。また150〜500Hzあたりも,Bluetooth接続のほうがわずかに強い。

 次に布製イヤーパッドを装着して同様のテストを行ってみよう。布素材のイヤーパッドだと低音が抜けるので,低域が弱くなる可能性が高い。
 まずはLIGHTSPEED接続から見ていく。

布製イヤーパッド,LIGHTSPEED接続,EQ=フラット,サラウンド無効の出力特性。赤線がリファンレンス波形
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 上述したセオリーどおり,低域が布製イヤーパッドから少し抜けるので,合皮製イヤーパッドより低弱高強になっている。低域の山の頂点が80Hz付近なのは,合皮製イヤーパッドと同様だが,山の高さは低い印象だ。中域は,フラットではなくなり,イメージとして180〜350Hzくらいが一番深い谷。550Hz〜1.7kHzくらいはフラットに近く,2kHzにも深い谷がある。
 この周波数特性からすると,PRO X2 LSの補正EQは,合皮製イヤーパッドを装着したときに最適な特性となるよう調整されていると考えられよう。また,合皮製イヤーパッドと異なり,3.2kHzくらいから8kHz付近くらいまでが若干凸凹しているが,ここらが高域の山の頂点グループといえそうだ。超低域と超高域の落ち込み方は,合皮製イヤーパッドと同様である。

 布製イヤーパッド装着時で,サウンドカードにアナログ接続した状態はどうだろう。

布製イヤーパッド,アナログ接続,EQ=フラット,サラウンド無効の出力特性。赤線がリファンレンス波形
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 こちらも一見してのとおり,合皮製イヤーパッド装着時よりも低弱高強の特性だ。低域の山は60〜125Hzくらいになり,380Hzくらいまでゆるゆると落ちていく。そこからゆっくり高域に向かって強くなっていくのだが,これまでと同様,2kHzで一度落ち込み,そこからもう一段上がって5〜8kHz付近を頂点とする高域の一番高い山ができている。超低域と超高域の落ち込み方は,LIGHTSPEED接続とそれほど変わっていない。

 布製イヤーパッド装着時LIGHTSPEED接続とアナログ接続の周波数特性差分も見てみよう。

布製イヤーパッド,LIGHTSPEED接続とアナログ接続の差分画像。赤線がアナログ接続
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 同じイヤーパッド同士の差分なので,合皮製イヤーパッド同士の差分とよく似ている。アナログ接続は,100〜400HzくらいがLIGHTSPEED接続より高く,それ以下の超低域ではやや弱い。また,アナログ接続は600Hzと3kHz付近がやや弱く,4kHz以上がやや強いのも合皮製イヤーパッドと同様の傾向だ。

 次は,布製イヤーパッド装着時のBluetooth接続の特性を見てみる。

布製イヤーパッド,Bluetooth接続の出力特性。赤線がリファンレンス波形
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 LIGHTSPEED接続とは異なり,低域の山の頂点は80Hz付近で,しかもかなり尖った形状だ。270Hzくらいが一番谷底で,山からここに向けて落ち込んでいく。少し強くなった600〜1.8kHzくらいがフラットで,2kHzが二番底。そこからまた強くなり,3kHz〜8kHz付近は若干凸凹しながら,高域の山の頂点群となっている。

 布製イヤーパッド装着時のLIGHTSPEED接続と,Bluetooth接続の差分も取ってみた。

布製イヤーパッド,LIGHTSPEED接続とBluetooth接続の差分画像。赤線がBluetooth接続
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 500Hzくらいから上は,どんどん差がなくなっていき,3kHz以上は,ほぼ差がない。差異は主に低域で生じている。80Hz付近が角のように鋭い山になっていると書いたが,差分を取ると,Bluetooth接続の80Hz付近が強いのはほんのわずか。実際には,Bluetooth接続は45〜70Hz付近が弱く,130〜500Hzくらいはやや強いという結果となった。

 同じ接続方式で,異なるイヤーパッドを装着した時の差分も取ってみた。

合皮製イヤーパッドと布製イヤーパッド,LIGHTSPEED接続での差分画像。赤線が布製イヤーパッド
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 合皮製イヤーパッド装着時と比較して,布製イヤーパッドは380Hzくらいから低域が弱く,それより高域は強くなる。一番強いのは2.5〜4kHzくらいだが,1.5kHz付近や12kHz付近もやや強い。この差分を見ると,布製イヤーパッドは合皮製イヤーパッドと比較して,低弱高強なのがよく分かる。

合皮製イヤーパッドと布製イヤーパッド,Bluetooth接続での差分画像。赤線が布製イヤーパッド
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 布製イヤーパッド装着時のBluetooth接続も,LIGHTSPEED接続時の結果とよく似ている。ただ,38〜380Hzくらいの帯域がやや弱いのはLIGHTSPEED接続時と同様だが,形状はもっと凸凹しているのが分かるだろう。

 布製イヤーパッドのアナログ接続時もLIGHTSPEED接続時の比較結果と近い形状だ。むしろどちらがどちらか分からないくらい酷似している。

合皮製イヤーパッドと布製イヤーパッド,アナログ接続での差分画像。赤線が布製イヤーパッド
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PRO X2 LS視聴テスト。定位把握がしやすい周波数バランス


 以上を踏まえて試聴テストに移ろう。まずはステレオ音楽を視聴してみる。LIGHTSPEED接続,Bluetooth接続,アナログ接続で,合皮製イヤーパッドと布製イヤーパッドを装着して試聴してみた。

●合皮製イヤーパッド ステレオ音楽
 まずは合皮素材のイヤーパッドを装着したLIGHTSPEED接続から試す。
 低域の山が高域の山とほぼ同じ高さなのと,180Hzから中域がフラットだからか,グラフェン素材のおかげか,かなりすっきりした音質傾向に聞こえる。180Hz以下が80Hzを頂点としてきちんと存在するので,低域は,予想したよりもしっかり再生されるが,あくまでもほどよい程度で,低域とそれ以外の周波数帯域でバランスが崩れることはない。あくまでも山は180Hzまでで,180Hz以上の中低域がフラットだからクリアに聞こえるのだ。
 また,むやみに高域が強いわけでもないのに,音源移動の定位把握が非常にしやすい。歪みも少ないのだが,まず感じるのは,「よい周波数バランス」の音質傾向だ。

 合皮素材のBluetooth接続はどうであろう。
 こちらは,サンプリングレートが48kHzから44.1kHzになっているせいか,若干高域が抑えられて聞こえ,その分,低域が相対的に前に出てくる印象だ。人によっては,LIGHTSPEED接続ほどは「抜けのいい音ではない」と感じるかもしれないが,より低域強めな,しっかりした「ガッツのある音」で再生されると感じるかもしれない。いずれにしても音源移動の定位把握はとくに問題ない。聞いた印象が少々異なるだけだ。

 合皮素材のアナログ接続は,80Hzの山が低いが,100〜300Hzの中低域が強かった。トータルの低域バランスは,LIGHTSPEEDより若干軽い程度だ。その分,高域がさらにクリアに抜けて聞こえるので,高域の抜けは一番よく感じる。アナログ接続は,音楽試聴に非常にいい。

●布製イヤーパッド ステレオ音楽
 布素材のイヤーパッドに取り替えてLIGHTSPEED接続すると,案の定,合皮素材よりも低域が抜けて,はっきりと低弱高強の特性になる。180〜380Hzくらいが底だからだろう。音楽試聴なら,合皮素材のほうが筆者は好みだ。とは言え,高域の再生はクリアだし,低弱高強でも高域の歪みは感じられない。これはこれでいいという人もいるだろう。

 布素材のイヤーパッドでBluetooth接続は,合皮素材とは異なり,低域が抜けているからか高域が抑えられた印象はない。低域は,合皮製よりも弱くなるが,LIGHTSPEED接続ほど失われず,低域と高域のバランスは,LIGHTSPEED接続よりもいいかもしれない。中低域とはいえ,130〜500HzあたりはBluetooth接続のほうが強いからだろう。

 布素材イヤーパッドでのアナログ接続は,100〜400Hzあたりが若干強いからか,高域の抜けは変わらずよいものの,低域のバランスもほどほどで音楽試聴でもイケる音質傾向だ。PRO X2 LSは,いいサウンドデバイスとアナログ接続すると,布素材イヤーパッドでの音楽試聴にも優れることが分かる。ただ,重低音が非常に強い音質傾向が好みの人は,この限りではない。

DTSスーパーステレオモードには,3つのプリセットがある
画像集 No.077のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]
 G Hubのパートで説明したように,LIGHTSPEED接続は,DTSのスーパーステレオモードが利用できるので,こちらを有効にして音楽を聞いてみた。
 DTSスーパーステレオモードには,フロント,ワイド,トラディショナルと3つのプリセットがあるが,どれも音圧が非常に高くなり,高域が落ちて低域〜中低域くらいが前に出てくる。トラディショナルだけは,少し広がりも出る。フロントとワイドはモノラルっぽさが増して,楽曲にもよるのだろうが,正直あまり区別がつかない。
 せっかくなので試してみるのはありだと思うが,筆者には相変わらず「やり過ぎ」感が拭えず,合皮製,布製どちらのイヤーパッドでも,DTSスーパーステレオモードは音楽試聴にはお勧めできない。

 ちなみに,テスト時に気づいた点だが,サラウンドサウンドを有効にしてスーパーステレオモードをオフにした状態と,サラウンド無効の完全バイパスは,低域の再生が異なる。具体的には,サラウンド有効時は無効時よりも低域がやや弱くなるのだ。音楽試聴にもPRO X2 LSを使おうと思っている人は,この点に注意したほうがいい。

画像集 No.076のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]
 続いては,サラウンド出力のPCゲームを用いた試聴に移ろう。DTS Headphones:X 2.0は,LIGHTSPEED接続時しか利用できない。そこで今回の試聴では,LIGHTSPEED接続でサラウンドサウンド有効,プリセット「ゲーミング」に設定し,合皮素材のイヤーパッドを用いる。

●LIGHTSPEED接続 Fallout 4
 まずはFallout 4から。例によって,ヘリの前でぐるぐる回ってサラウンド感を確かめる。DTS Headphones:Xは,今どきのバーチャルサラウンドプロセッサだけあって,音源移動の定位変化をピンポイントで把握しやすいが,PRO X2 LSでも,それはいかんなく発揮されている。
 ヘリの飛行中,前方右に定位するローター音や,後方に定位した低いエンジン音は,定位どおりに聞こえる。中域がフラットで,低域および高域の山と差があまりないからか,無線音声も奥に引っ込んだりせずに聞き取れる。低域と高域のバランスもよく,必要以上に低域が強すぎたり,高域が強すぎたりもしない。
 重低域はそれほど強くないので,重低域に耳が圧迫されることもなかった。着陸時の金属的な効果音も,迫力はあるが強すぎず弱すぎず,いい塩梅だ。

●LIGHTSPEED接続 Project CARS 2
 次は「Project CARS 2」を試す。
 PRO X2 LSの大きなウリのひとつであるグラフェン素材のスピーカー振動板は,音の解像度が向上したことで「ゲーム中で鳴る多数の音を聞き分けやすくなっている」ということだったが,それを定量的に計測する手段は,残念ながら存在しない。しかし,本タイトルのように前後左右で異なる効果音が再生されるタイトルで,それらの音がどのように聞こえるかで,PRO X2 LSの実力が測れるのではないか。

 実際にリプレイを再生してみると,前後にいる敵車の聞き分けはもちろん,横を通り過ぎる車の音の移動も,実にスムーズに把握できる。
 驚いたのは,日頃聞き落としている効果音が,数多く耳に入ってきたことだ。具体的には,石つぶてが車体に当たった「コン!」という音が,リプレイ中に何回も聞こえた。通常なら,あまり意識していない音であり,こういった意識しないと聞き取れない効果音を,意識せずとも拾えるのがPRO X2 LSの強みであり,おそらくだがグラフェン素材を用いた恩恵のように思われる。
 縁石に乗り上げた音やワイパー稼働音は軽い音だが,聞き取ることは容易だ。前後の敵車も,意識することなく両方の動きを同時に苦もなく把握できた。集中しなくてもいろいろな効果音をサラウンドで聞き取れるのは,PRO X2 LSにおけるアドバンテージだろう。

●LIGHTSPEED接続 PC版MONSTER HUNTER: WORLD
 さらに,PC版「MONSTER HUNTER: WORLD」(以下,MHW)で,村の中を歩き回ってみて確認を行う。本作は,音源に近づかないとそこからの音は聞こえないので,Project CARS 2のように,四方八方からサラウンドで常時効果音が鳴り続けるわけではない。それでも,日頃は聞き落としている音が拾えた。
 「あれ? こんなところで音鳴ってたっけ?」という場面で音が聞こえるということはあまりないのでちょっとした驚きで,「音を拾ってゲームに役立てる」という目的は,PRO X2 LSでかなり達成できそうな印象だ。

 また,真正面にある音源の定位は,非常に正確で,かなりしっかりした定位感が得られる。難しいとされるフロントL/Rチャンネル付近の定位も,難なく実現していた。もちろん,後方定位も「ああ,この音後ろから聞こえてたのか」という発見があったりなかなか楽しい。「聞き取れる音が増える」や「聞き落としが減る」という点において,PRO X2 LSはトップクラスのヘッドセットだと思う。

 最近,立て続けに取り上げた「モニター系ヘッドセット」の音質感とはまた少し違うのだが,かといってオーディオリスニング用ヘッドフォンとも違う。ゲームに特化して,プレイしやすくストレスがかからないように配慮して設計されているという印象だ。

●LIGHTSPEED接続 PS4版MONSTER HUNTER: WORLD
 最後にPlayStation 4版MHWで,PC版と同じ確認を行った。
 このテストでは,LIGHTSPEEDワイヤレスレシーバーをPS4のUSBポートに接続している。プラグ&プレイでまったく問題なく認識された。
 ただ,PS4自体はサラウンドサウンド出力に対応しておらず,PRO X2 LSも,PCに接続しないとDTS Headphone:Xが使えない(※PlayStation 5は,システム自体がサラウンドサウンド出力に対応する)。そのため,いつもどおりMHWが独自にサポートするサラウンドサウンド機能を有効にする。ダイナミックレンジは,PC版と同じ「ワイドレンジに設定」した。

 ゲーム側組み込みのサラウンドサウンドでもヘッドセット自体のできがいいと結構なパフォーマンスが出ることが最近多いが,PRO X2 LSもその例に漏れず,きちんとサラウンドサウンドが定位する。前後の定位が逆になるといった,おかしな挙動は一切ない。DTS Headphone:Xほどカリカリの定位感とはさすがにいかないが,オーディオ機器としてのPRO X2 LSの品質が高いので,PS4のサウンドも,安いヘッドセットではまず味わえない,いい音で再生できるので,普通のヘッドセットとPS4の組み合わせで得られるものより,一段上の体験が味わえる。機会があればぜひ試してほしいところだ。


狭帯域でドンシャリ特性のマイク


マイク入力品質テスト用のリファレンス波形
画像集 No.078のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]
 PRO X2 LSのマイク入力音質をテストしよう。
 本製品は,LIGHTSPEEDとBluetooth,アナログ接続が利用可能なので,すべてで集音してみた。Bluetoothの接続先はテスト用PCなのだが,問題が生じた。Bluetooth接続では,ハードウェアノイズリダクションが常時有効になってしまい,テストに使用しているスイープ音を集音すると,ノイズリダクションに引っかかって周波数によっては途切れてしまうのだ。そのため,残念ながらBluetooth接続の入力テストは割愛し,LIGHTSPEED接続でハードウェアノイズリダクション,および音声にエフェクトをかけるBLUE VO!CE機能はすべてオフの状態と,SoundBlaster ZxR経由のアナログ接続で,すべての音響処理オフの状態で計測した。

 PRO X2 LSの製品情報ページで仕様を確認すると,マイク入力の有効周波数帯域は,100Hz〜10kHzとなっていた。USB接続のマイクで典型的なサンプリングレートの制約が,高域側に見れる。テストしたところ,アナログ接続時に,この制約はないことが確認できた。低域の周波数下限が高いのは,低周波ノイズを減らしながら明瞭度を上げるために,ハイパスフィルターで低周波をカットしているからだと思われる。
 なお,マイクの指向性は,カージオイド型の単一指向性なので,空気孔の場所からして,内側(口の側)の音のみ拾っているものと思われる。

 まずは,LIGHTSPEED接続時のマイク入力特性から。

LIGHTSPEED接続におけるマイクの入力特性。赤線がリファンレンス波形
画像集 No.079のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]

 低域は135Hz付近,高域は7kHz付近を頂点として,1.1kHz付近を底とするドンシャリ型の音質傾向だ。仕様では100Hz〜10kHzであるが,基準を1.1kHzの谷底とすると,20Hz〜8kHzくらいの周波数特性に見える。さらに言えば,結構深めというか,強めのドンシャリ型だ。
 なお,モノラルマイクということもあり,位相は完璧だ。

 こちらはアナログ接続した時のマイク入力特性となる。

アナログ接続におけるマイクの入力特性。赤線がリファンレンス波形
画像集 No.080のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]

 アナログ接続では,低域にハイパスがかかっておらず,高域もサンプリングレートの制約がないので,非常に広いマイク入力特性となっている。低域の山の頂点は90〜150Hzといったところだろうか。高域の頂点は10kHzくらいに見える。谷は1.1〜1.5kHzくらいだ。位相はモノラルマイクなので,相変わらず完璧だ。
 周波数特性を見る限り,LIGHTSPEED接続時は,サンプリングレートの物理的な制約だけでなく,意図的なハイパスフィルターや,EQによる周波数補正処理が,ヘッドセット内部のDSP上で行われているものと推測できる。G Hubの処理をすべてオフ,ハードウェアノイズリダクションもオフでも,アナログ接続時との特性の差が表れたからだ。

 ヘッドフォン周波数特性とは異なり,音声を集音する分には,Bluetooth接続でもまったく問題ないので(※問題が生じるのはスイープ音のような特殊なテスト信号音だけ),LIGHTSPEED接続,Bluetooth接続,アナログ接続で自分の声を録音して聞いてみた。なお,LIGHTSPEED接続とBluetooth接続は,ハードウェアノイズリダクションを有効にして,LIGHTSPEED接続のBLUE VO!CEは無効のままだ。

●マイク入力:LIGHTSPEED接続
 あえて空調を入れてエアコンノイズ混じりの状態で録音したが,LIGHTSPEED接続では,ハードウェアノイズリダクションのおかげで完璧にノイズは消えていた。ドンシャリ気味で低域もしっかり存在するからか,サンプリングレートの制約のせいで鼻詰まったようには聞こえない。

●マイク入力:Bluetooth接続
 ハードウェアノイズリダクションありの環境でBluetooth接続も収録したところ,こちらもノイズは完璧に消えているのだが,LIGHTSPEED接続よりサンプリングレートが低いせいか,少しこもったような音質傾向になっていた。

※Bluetooth接続の場合,Windows上ではサンプリングレート16kHzとなっていても,実際は8kHzまでしか録音されない

 ちなみに,LIGHTSPEEDとBluetooth接続で使用したハードウェアノイズリダクションは,おそらく同じ挙動をしていて,結構強めのノイズキャンセル処理が行われる。G HubにあるBLUE VO!CEの設定で,録音,再生して音質を確かめられるので,実際ゲームを行う前に動作確認しておくと安心だろう。

●マイク入力:アナログ接続
 アナログ接続にはハードウェアノイズリダクションがないので,エアコンのノイズが音声のバックグラウンドにいるのが聞こえてしまう。ドンシャリで低域も低い帯域まで集音できるし,USB経由のようなサンプリングレートの制約がないので,高域の抜けもとてもいい。だが,ノイジーな環境でプレイする場合は,使用するサウンドデバイスでノイズリダクション処理を行うほうがいいかもしれない。


すべてが「バランスいい」

ゲーム向けに最適化されたヘッドセット


 一言で言って,PRO X2 LSとは「ゲームをプレイすると,とても音のバランスのいいヘッドセット」である。バッテリー駆動時間が倍になったり,おそらく新しいワイヤレス機構のおかげで到達距離も倍になったりと,いった特徴も,もちろんユーザーにとって大きな改善ではある。しかし,「PRO X2 LSを選ぶポイントは?」と問われると,やはり筆者は「とにかく音のバランスがよく,今まで聞き取りにくかった音,聞き落としていた音を聞きやすくなる」のが最大のアドバンテージだと思う。グラフェン素材を使用したスピーカーのおかげで,音によってゲームの勝敗が左右するようなシーン,まさにeスポーツのプロが使用する環境で使いたいと思わせるヘッドセットだ。

画像集 No.081のサムネイル画像 / グラフェン製ドライバー採用で「聞こえなかった音まで聞こえる」ヘッドセット「PRO X 2 LIGHTSPEED」[レビュー]

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ロジクールのPRO X 2 Wireless製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    Logitech G/Logicool G

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