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Access Accepted第564回:Microsoftが狙う「Xboxの次の一手」
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印刷2018/02/05 12:00

業界動向

Access Accepted第564回:Microsoftが狙う「Xboxの次の一手」

画像集 No.001のサムネイル画像 / Access Accepted第564回:Microsoftが狙う「Xboxの次の一手」

 海外ゲーム担当という仕事柄,XboxとXbox 360は筆者のメインコンシューマ機だった。しかし,Xbox Oneはどうも起動している時間が少ない印象だ。理由をアレコレ考えてみると,やはりXbox Oneでしか遊べないエクスクルーシブタイトルの少なさに行きつく。というわけで今週は,現在,北米のゲーム業界で囁かれている,Microsoftの「次の一手」について考えてみたい。


パッとしなかった2017年。ちょっと不安な2018年


 2017年末から2018年初めにかけて,「奥谷海人のAccess Accepted」では恒例の記事を3本,3週にわたって掲載した。本連載の第560回「海外ゲーム通ならプレイしておくべき2017年のタイトル10選」で2017年の欧米ゲーム市場を振り返り,続く第561回「2018年注目の欧米産ゲームタイトルは,これだ! (前編)」と第562回「2018年注目の欧米産ゲームタイトルは,これだ!(後編)」では,2018年にリリースされる予定の期待のゲームを紹介した。
 掲載したタイトルのラインナップを通して見れば明らかであり,記事中でも触れてはいるが,プラットフォームホルダーの一翼を担っているMicrosoftのプレゼンスが,見る影もないほど発揮されていないことに改めて驚く。

 2017年1月,日本生まれのXbox One専用タイトルとして開発が進められていた,プラチナゲームズの「Scalebound」の開発中止がアナウンスされた。2016年にはLionhead Studiosの「Fable Legends」の開発中止が明らかになっており,どちらも期待されていただけに,繰り返されるキャンセルに落胆したファンも少なくないはずだ。
 Insomniac Gamesの「Sunset Overdrive」やRemedy Entertainmentの「Quantum Break」など,Xbox Oneのエクスクルーシブタイトルの評価は悪くないのだが,開発にはトラブルがつきまとう印象がある。

2017年に市場に投入されたハイエンドモデル「Xbox One X」。ネーミングが分かりにくいという意見があり,それがセールスに影響している可能性もあるのだが,少なくとも2018年内に同機の性能を超えるライバル機は登場しないようだ
画像集 No.002のサムネイル画像 / Access Accepted第564回:Microsoftが狙う「Xboxの次の一手」

 Xbox Oneの問題点の1つは,こうしたエクスクルーシブタイトルの数が少ないということだろう。2017年,メディアやファンの評価を示すMetacriticにおいて100中75点以上を獲得したXbox One専用タイトルは3本だった。一方で,Sony Interactive EntertainmentのPlayStation 4は,期待作の多くが2018年の発売に持ち越されながらも「仁王」「Horizon Zero Dawn」など22作品が75点以上を獲得している。
 好調な滑り出しを見せた任天堂のNintendo Switchでは,「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」など17作が並んでおり,これらに比べて高評価を受けたXbox One専用タイトルはあまりに少なく,寂しい雰囲気が漂う。
 ちなみに,Xbox One専用タイトルとしてランクインしたのは「Forza Horizon 3: Hot Wheel」「Forza Motorsport 7」という2本のレースゲームと,インディーズタイトルとして高い評価を得た「Cuphead」で,FPSやRPGといった人気の高いジャンルでは存在感が感じられない。

「スーパードンキーコング」(1994年)から「スターフォックスアドベンチャー」(2002年),そして「あつまれ!ピニャータ」(2006年)まで,日本でも良く知られたイギリスのメーカーRareがPCおよびXbox One向けに開発を進める「Sea of Thieves」
画像集 No.003のサムネイル画像 / Access Accepted第564回:Microsoftが狙う「Xboxの次の一手」

 Microsoftの2018年以降のエクスクルーシブタイトル(いずれも後述のようにPC版もあるが)としては,ようやくβテストに入ったRareの「Sea of Thieves」のほか,Undead Labsの「State of Decay 2」や,Capybara Gamesの「Below」,そしてSumo Digitalの「Crackdown 3」などがあるが,PlayStation 4の「ゴッド・オブ・ウォー」「Detroit Become Human」「Marvel's Spider-Man」「Dreams」など,2018年の発売が予定されている作品群と比べると,やはり寂しく感じられる。現時点でXbox One専用タイトルの情報は少ない。


専用タイトルを増やす手っ取り早い方法とは


 MicrosoftはXbox 360時代にXbox Liveを成功させ,パッケージ販売という既存のゲームビジネスを「Games as a Service」(以下,GaaS。サービスとしてのゲーム)へ転換させるべく投資を続けてきた。2014年にリリースされたXbox Oneでは,正式な販売台数を2015年以降,発表していないが,フィル・スペンサー(Phil Spenser)氏らXbox部門のトップ達は,「MAU」(Monthly Active Users。月間アクティブユーザー数)の高さで,“GaaSとしてのXbox One”の好調さを訴えている。

 Microsoftが現在,サービスの基軸と位置付けているのが「Universal Windows Platform」(UWP)戦略だ。UWPとは,Windows 10用のアプリプラットフォームこのことで,この環境で開発されたアプリケーションは,PCやタブレット,スマートフォン,Xbox One,HoloLensなど,すべてのWindows 10デバイスで動作すると説明されている。ここから生まれたのが「Xbox Play Anywhere」であり,さらに「Cross Play」「Cross Buy」というコンセプトだ。Xbox Liveのアカウントを持っていれば,(ソフトが対応している場合)PCでもXbox Oneでも同じゲームをプレイできる。

Microsoftの「Universal Windows Platform」戦略により,それなりのグラフィックスカードを搭載したWindows 10搭載PCを持っていれば,Xbox One向けの多くのタイトルが遊べるようになった
画像集 No.004のサムネイル画像 / Access Accepted第564回:Microsoftが狙う「Xboxの次の一手」

 しかし,Microsoftにとってこれは諸刃の剣でもある。つまり,Xbox OneタイトルのほとんどはPCでもプレイできるので,それなりのPCを保有していれば,追加でわざわざ数万円の新しいハードウェアを買う必要がなくなったのだ。Microsoftとしては,それでも1本のゲームを長く遊んでくれれば良いとしているのだろうが,ゲームを開発するデベロッパが「Xbox Oneエクスクルーシブ」にすることの意義は当然,薄くなる。

 さらに,Xbox 360時代はMicrosoftのお家芸とも言われた「タイムエクスクルーシブ」(時限独占。具体的にはXbox 360版の先行発売や,DLCの先行配信)というマーケティング戦略も最近は,PlayStation 4の好調な販売実績を背景にしたSony Interactive Entertainmentにお株を奪われてしまった格好だ。

2014年に「Minecraft」のMojangを高額買収したMicrosoftだが,現状打破のため,さらなる買収に乗り出すという話も聞こえてくる
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 そんなMicrosoftの起死回生の一手として,最近,欧米ゲーム業界で噂されているのが「企業買収」だ。同社は,トランプ政権の掲げる2360億ドル(約26兆円)に達する大型減税政策で恩恵を受ける企業の1つで,減税により同社の資金は1300億ドル(約14兆円)に達すると見積もられている。

 海外メディアのPolygonは匿名のMicrosoft社員からの情報として,この余剰資金を使って企業買収に打って出るという記事を掲載した。買収の対象として名前が挙がった北米の最大手パブリッシャElectronic Artsの場合,企業価値は3.7兆円ほどであり,Microsoftにとって高すぎる買い物ではない。

 Microsoftは2014年,スウェーデンのMojangを傘下に収めたが,「Minecraft」のメーカーとはいえ,25億ドル(約2750億円)という買収価格は破格だ。上記の記事によれば,Electronic Artsのほか「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」PUBG Corp,さらに「Steam」を運営するValveも検討されているという。
 エクスクルーシブタイトルを揃えたいなら,大手パブリッシャを丸ごと買収してしまうのが手っ取り早い。上記のようにMicrosoftはゲームを継続的なサービスだと考えており,「Minecraft」も数年かけてペイすればそれで投資は成功したというスタンスだ。記事の真偽は今のところハッキリしないが,2018年のMicrosoftの動きには,こういう点からも引き続き注目していく必要があるだろう。

※2018年2月6日11:20追記
初出時,プラチナゲームズ様の社名に誤りがあり,訂正のお知らせも遅れておりましたことを深くお詫びいたします。


著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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