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Access Accepted第576回:ゲーマー向けの無料コミュニケ―ションツール「Discord」
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印刷2018/05/21 12:00

業界動向

Access Accepted第576回:ゲーマー向けの無料コミュニケ―ションツール「Discord」

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 公開からわずか3年で1億3000万ものユーザーを獲得したという,ゲーマー向けチャットシステム「Discord」をご存じだろうか? 「Fortnite」などのバトルロイヤルゲームの人気の高まりと共に,一気にゲーマー向けボイスチャットツールに成長した感のある新世代のVoIPサービスで,今やユーチューバーやストリーマー,さらにはゲーム企業のコミュニケーションの場としても存在感を発揮しているという。オンラインゲームを嗜む以上,見逃せないサービスになった「Discord」を紹介したい。


3年で1億3000万人の利用者を獲得した「Discord」


 VoIP(Voice-over-Internet Protocol)を使った音声・テキスト通話用の無料アプリ「Discord」の公開は,ちょうど3年前の2015年5月13日のことだった。2016年1月にようやくユーザー数が300万人に達した程度だったが,その後は,月間100万人というハイペースで新規利用者を伸ばし続け,2017年には8500万アカウントを達成。サービス3年を祝う今年の5月16日には,登録者数1億3000万という数字がアナウンスされている。

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「Discord」公式サイト


 2011年に「OpenFeint」をGREEに1億400万ドルで売却したジェイソン・シトロン(Jason Citron)氏は,2012年にモバイルゲームメーカーHammer & Chiselを設立。開発したiOS向けのMOBAタイトル「Fates Forever」の運営しているときに考え付いたのが,「Discord」だという。
 2014年にリリースされた「Fates Forever」はそれほど人気が出ず,ローンチから1年ほどたった2015年にサービス終了となっているが,シトロン氏は,「モバイルプラットフォームでは,MOBAのようなチーム対戦型オンラインゲームで必要となるコミュニケーションが取りづらい」ということを強く感じたそうだ。

 やがてシトロン氏らは,PCで人気の「League of Legends」「Final Fantasy XIV」でさえ,プレイヤー間のボイスチャットが十分に機能していないことに気付く。「Skype」や「TeamSpeak」など,旧来からのチャットシステムではリソースの無駄が多かったのだ。そこで「Mumble」などと同様,opusコーデックを採用した低レイテンシのボイスチャット機能にこだわり,これをゲーム向けにカスタマイズしたものが「Discord」である。

 「Discord」をサービスするために同名の会社を立ち上げたシトロン氏らは,2015年1月の時点で2000万ドルほどの資金をインキュベーターから集めていたが,多数のゲーマーの関心を集めていたとは言い難かった。人気のきっかけになったのは,海外の巨大掲示板として知られる「Reddit」で使われ始めてからで,株の取引きから「ファンタジーフットボール」まで,ゲーム以外のことでも盛んに利用されるようになっていった。

 2016年12月には「GameBridge API」が公開され,ゲーム内に「Discord」の機能を組み込めるようになったことも,大きな飛躍の理由の1つだろう。それまでは,ビデオ/ボイス/テキストチャット機能をゲームに組み込む場合,自社開発するか,限られた機能しかないサードパーティの製品をライセンスするしか方法がなかったが,「Discord」は開発者が好きな要素を選んでカスタマイズできるというオプションを持つ,非常にフレキシブルなものだったのだ。

「Discord」が公開3周年を記念し制作したインフォグラフィックス。2017年末に57人だった従業員は,カスタマーサービスの充実を図るため,現在は100人以上に増えた
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 「Discord」は現在,MOBAタイトルだけでなく,「Fortnite」「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」など,バトルロイヤルゲームのコアユーザーのほとんどが使用するスタンダードなチャットツールになっている。
 4月には,「Minecraft」プレイヤーにおける人気の高さに気づいたMicrosoftが,「Xbox Live」のアカウントと「Discord」を連携させると発表している。5月の段階で「Discord」の1日あたりのアクティブユーザー数は1900万人,ピーク時には820万人もの同時接続者を記録しているという。


圧倒的な機能で楽しめるコミュニケーション


 多くのコミュニケーションツールと異なり,「Discord」は「サーバーをブラウジングして気になるコミュニティに参加する」といったことはできない。検索ツールを使って仲間を募っているコミュニティに入るとか,遊んでいるゲームの公式フォーラムや「Reddit」のような掲示板で同志を見つけるとか,あるいは自分でサーバーを作ってフレンズを呼んでみるといったことが必要で,このへんは少し面倒に感じられるだろう。
 その一方で,「Discord」は多くのユーザーをホストでき,そこが最大の魅力であるといえる。小さなコミュニティなら,わざわざ「Skype」や「TeamSpeak」から「Discord」へと乗り換える必要はないだろうが,コミュニティが大きくなってきたときに「Discord」は威力を発揮する。

現在,最大級のプレイヤー数を誇っているのが「Fortnite」で,18万人がアクセスするサーバーもあるという。2018年3月にテレビ出演した人気ラッパーのドレイクさんが,「Fortniteを友人と遊ぶためにDiscordをインストールした」と発言したことで人気に火がついたとも言われている
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 とくにPCゲーマーにとって便利なのが,ブラウザで「Discord」を開いたままプレイ中のゲームにオーバーレイさせ,ボイスやテキストチャットに興じられることだ。「Discord」のボイスチャットは,特定のプレイヤーの音量を調整することが可能で,多人数が参加するMMORPGやバトルロイヤルで必ずいる,罵声や絶叫ばかり垂れ流すプレイヤーの騒音をカットして,仲間と気持ち良くプレイできるのも良い点になる。

 メッセージのマネジメント機能も秀逸で,それぞれのユーザーのアクセスレベルを調整できる複数のチャンネルに分けることができる。YouTubeやTwitch,あるいはMMORPGのテキストチャットに見られるような,誰も読むことができないくらいのスピードで流れていくテキストチャットを想像してもらうと理解しやすいが,参加人数が多いほどフォローするのが難しくなるメッセージも,テーマやプレイヤーに分けて,充実した会話ができるのだ。ユーチューバーやストリーマー達が「Discord」を使うようになったのも,こうしたゲーマーに特化したような機能によるものだろう。

Facebook,Twitterと並んで,メーカーの発表やコミュニティサービスの場として活用されるようになってきた「Discord」。「Spotify」と提携し,1人のユーザーが選択した音楽をグループで楽しめるという,驚くような機能も備えている
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  現時点で順調にユーザー数を増やしている「Discord」だが,もちろん問題点がないわけではない。「Discord」はコミュニケーションやマネジメントをさらに円滑に行える公式/非公式BOTの利用が認められているが,怪しいBOTを利用した人のアカウントがハッキングされたという事例が確認されている。また,2017年8月にバージニア州で起きたヘイトクライムの首謀者達が「Discord」の専用チャンネルで連絡を取り合っていたという疑惑が浮上し,関連アカウントとサーバーが「Discord」の手によって閉鎖されたこともある。
 1億3000万という利用者を誇るソーシャルネットワークサービスである以上,さらに安心して利用できる環境を整えてほしいところだ。

 Discordは,サービス開始3周年を記念した大型アップデートを行っている。参加者が100人であれ10万人であれ,CPUやネットワークへ大きな負担をかけないように修正されたほか,バッテリーの使用量を下げるといったモバイル向けの改良も行われた。さらなる成長を遂げそうな「Discord」だけに,まだ使ったことがないという人は,一度試してみてはいかがだろうか。保証はできないが,オンラインゲームの成績が見違えるようにアップするかもしれない。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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