プレイレポート
「ドラゴンクエストVR」を先行体験。目の前に広がるドラクエの世界,攻略のカギは“仲間との連携”にあり
国民的RPG「ドラゴンクエスト」の冒険をVR技術で再現し,実際に体験できるドラゴンクエストVRは,4月3日の発表以来,大きな話題となっている。すでにチケット予約の受付が行われているが,ゴールデンウィーク中はすべての枠が埋まっているという状況だ。
VR ZONE SHINJUKU「ドラゴンクエストVR」公式サイト
ドラゴンクエストVRの冒険は約15分(事前のブリーフィングや機材の装着を含めると約30分)で,最大4人のプレイヤーがパーティを組むことになる。パーティ構成は「戦士」「戦士」「魔法使い」「僧侶」だ。
そのため,アクティビティを開始する前に「誰がどの職業になるか」を決める必要がある。なお,体験者が4人に満たない場合は施設のナビゲーターやほかの体験者が加わることもあるそうだ。
アクティビティは「近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊ARISE Stealth」と同じフィールドにて行われるが,どちらも事前予約が必要なアクティビティなので,予約した時間に行けば体験できる。ご安心を。
なお,アクティビティの説明はフィールドに入る前に,簡単なブリーフィングを受けるのみ。本稿で予習をしておけば,よりスムーズに楽しめるはずだ。
体験者はバックパック型PCとヘッドマウントディスプレイ,マイク付きヘッドホンのほか,職業に応じたコントローラを装着する。戦士は剣と盾,魔法使いと僧侶は杖とバンドだ。それぞれにセンサーと振動する装置が内蔵されていて,モンスターとの戦闘や呪文を唱えたときに衝撃が感じられるという仕組みになっている。また,パーティ同士はマイクで会話が可能だ。
体験者が演じる職業について説明しておこう。前衛となる2人の戦士は,剣を振ることで目の前のモンスターを攻撃し,モンスターの攻撃や呪文を盾で防御することができる。呪文は一切使えない。
盾を持たない魔法使いと僧侶は後衛だ。杖を持つ利き手に,バンドを持っている手をかざすと,目の前に3つの魔法陣が出現する。いずれかを杖で選んでから,対象となる冒険者のほうを向いてロックオン,そのまま杖を振り下ろすと呪文を唱えるという流れだ。
このときに杖を掲げている時間が長いほど,強力な呪文を出せるようになっている。MP(マジックポイント)の概念はないので,呪文は使い放題。だが,直接攻撃や防御の手段を持っていないので,モンスターに攻撃されたときは動いて避けるか,前衛の戦士の後方に隠れるしかない。
なお,魔法使いの呪文は「メラ」(炎で攻撃),「ヒャド」(氷で攻撃),「バイキルト」(仲間の攻撃力上昇)。僧侶の呪文は「ホイミ」(仲間の回復),「ザオリク」(仲間の蘇生),「バギ」(竜巻で攻撃)となっている。
今回,筆者は戦士を選んでいるが,最も役割がシンプルな職業だと思う。もしドラクエの世界をあまり知らなかったとしても,冒険を存分に楽しめるだろう。
一方,魔法使いや僧侶は呪文の名称や効果について,多少なりとも知識があったほうがいい。なかでも僧侶は戦闘中,仲間全員の状態に気を配らなくてはならない“司令塔”の存在であり,僧侶が力尽きるとパーティの回復手段が失われてしまう。ある意味,最も責任が重大であり,それだけに最も面白い職業ではないだろうか。
前述のとおり,ドラゴンクエストVRはフィールドを歩いたり,プレイエリアを変えたりしながら楽しめる。城の王様から“大魔王ゾーマ討伐”の命を受けた4人の冒険者は,ナビゲート役のホイミスライム「ホミリー」の導きによって,「草原」「山麓」「ゾーマの城」というステージで冒険を繰り広げていく。
一人称視点のため,自分の姿は腕や足しか見えないが,ドラクエの世界に立ち,見慣れた装備を身に付けていることにワクワクするはずだ。また,冒険のなかでレベルアップをすると装備が変わるので,あのファンファーレが聞こえたら,自分や仲間の姿をチェックしてみよう。
序盤はスライムやドラキー,中盤にはさまようよろいやキメラ,ゴーレムといったモンスターが出現する。また,メタルスライムも登場するので逃さないようにしたい。
冒険者はモンスターの攻撃を1回受けると瀕死状態となり,さらに攻撃を受けると戦闘不能となってしまう。パーティ全員が戦闘不能になれば,当然「全滅」だ。その場で体験終了となるので,戦士が前衛で防御したり,僧侶が呪文で回復したりすることが重要になる。
フィールドの移動はホミリーによるルーラの呪文や,旅の扉によって行われる。このときの演出は見ものだ。
そして,最後にたどり着くのが,大魔王ゾーマが待つ城。戦士の攻撃が当たる距離に現れるゾーマは,冒険者を圧倒する大きさを誇る。もちろん戦闘力も圧倒的であり,筆者達は最大のピンチを迎えたが……。その後の展開は伏せておくので,ぜひ自分の目と耳と身体で確認してほしい。ドラクエらしい冒険のクライマックスに興奮を抑えられないはずだ。
今回,戦士として冒険を終えた筆者が感じたのは,重い装備を身に付けて戦うのはかなりしんどいということ。ドラクエの冒険者達の意外な苦労も体験できるアクティビティと言えるかもしれない。
また,戦闘については事前に「ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔」のような感覚を予想していたのだが,それは裏切られた。ただ攻撃をすればいいというものではなく,防御手段を持たない後衛のために盾を使って攻撃を防ぐといった役割もあり,より戦略性の高い攻防を味わえるという印象だ。
各職業のロールを考慮して,互いに声をかけ合う重要性も実感した。パーティ内の連携はドラクエの基本だ。
例えば,キメラは戦士の攻撃が届かない場所から炎を吐いてくるので,呪文によってダメージを与えるしかない。戦士が盾で炎を受け止め,魔法使いや僧侶が攻撃するといった連携が必要となる。また,僧侶が仲間のピンチに気づかないときもあるだろう。そんなときは「ホイミお願い!」と声をかけて,回復してもらおう。
ドラゴンクエストVRの体験後,バンダイナムコアミューズメントの「Project i Can」を担当するコヤ所長こと小山順一朗氏,タミヤ室長こと田宮幸春氏,ドラゴンクエストVRのプロデューサーを務める濵野孝正氏が囲み取材に応じてくれた。
ドラゴンクエストVRの企画自体は,バンダイナムコ側から持ちかけたものだという。それを,かねてから「ドラクエのVRを作りたい」と考えていたスクウェア・エニックスが快諾したそうだ。
VR体験におけるデザインはバンダイナムコが手がけ,ドラクエらしいストーリーや世界設定,演出に関してはスクウェア・エニックスが監修するという形で開発が進められたとのこと。2016年秋にプロジェクトがスタートしているというから,かなり長い年月をかけているようだ。
ドラゴンクエストVRのストーリーは「15分でドラクエをまるごと体験する」というコンセプトのもと,ゲームデザイナーの堀井雄二氏とスクウェア・エニックスのプロデューサー 市村龍太郎氏が中心となって構築されたもの。王様の前から始まり,冒険の果てに魔王と戦い,最後は王様の前で終わるという王道の展開を踏襲している。そこにパーティ戦闘やレベルアップ,ルーラの移動といった要素を盛り込み,「ドラクエらしさ」を演出している。
バンダイナムコの開発陣も,こうしたVR体験にドラクエのさまざまな定義を落とし込むことにはかなり苦労したそうだ。スクウェア・エニックスとの綿密なやりとりによって一つ一つ作り込んむことで,熱心なファンでも必ず納得できる内容に仕上がっている。
プレイヤーが手に持つコントローラは,振動による手応えを感じられるようにするため,ある程度の重量になったという。剣で攻撃する場合,モンスターによって手応えが異なり,さらに振る方向でも演出を変えているという。ただ,斬ったときの感触は自然で違和感がないものを目指しており,演出の一つとして捉えてもらいたいとのことだ。
ドラゴンクエストVRではモンスターのHPゲージや魔法陣の説明といった,ゲーム的な情報がほとんど出ない。その理由は「プレイヤーがドラクエの世界を体験する」ということを優先したためだ。実際にドラクエの世界に飛び込んだら,そこにモンスターの情報は表示されないだろうというわけだ。また,冒険のなかで徐々に気づき,要素を理解していくというエクスペリエンスを演出する意味合いも込められている。
ドラゴンクエストVRのプレイ料金は1回3200円(税込。VR ZONE SHINJUKUの入場料別)。掲載時点で予約は5月の予約はほぼ埋まっているが,近日中に6月以降の予約受付が開始されるとのことだ。
また,VR ZONE SHINJUKUではオリジナルグッズの販売や限定フードメニューの提供も行われる。ドラクエの世界を満喫した後は,こちらもチェックしておこう。
VR ZONE SHINJUKU「ドラゴンクエストVR」公式サイト
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