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きっかけは「天外魔境 風雲カブキ伝」!? 声優が歌舞伎を朗読する「こえかぶ」第2弾が最高におもしろかった【初日レポート】
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印刷2023/10/20 12:00

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きっかけは「天外魔境 風雲カブキ伝」!? 声優が歌舞伎を朗読する「こえかぶ」第2弾が最高におもしろかった【初日レポート】

 2023年10月7日〜9日に,東京の草月ホールにて「こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎 〜雪の夜道篇〜」が上演された。

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 本公演は人気声優陣による朗読劇で,歌舞伎のストーリーのおもしろさを現代語を交えながら伝える「こえかぶ」シリーズ第2弾にあたる。今回は12名のキャストが日替わりで出演し,ラジオ番組のスタジオに集った俳優やディレクター役を演じながら,劇中劇のような形で古典歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」と,「雪暮夜入谷畦道」を朗読した。

 本稿では初日となる10月7日の公演と,「こえかぶ」アンバサダーを務める歌舞伎俳優・中村鷹之資さんも交えたアフタートークの模様をお届けする。なお,今回の公演は収録されており,2023年12月にCS衛星劇場にてテレビ放送されることが決定している。

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【出演者】(※五十音順,敬称略)
10月7日(土)
内田 夕夜,斎賀 みつき,高橋 広樹,羽多野 渉

10月8日(日)
置鮎 龍太郎,甲斐田 ゆき,諏訪部 順一,福山 潤

10月9日(月祝)
立花 慎之介,朴 璐美,平田 広明,吉野 裕行

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 人気声優12名による歌舞伎の朗読劇「こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎 〜雪の夜道篇〜」が,2023年10月7日より東京・草月ホールにて上演される。その開演に先駆けて,ちょうど初回の稽古を終えられたばかりの制作陣にインタビューを実施した。

[2023/09/29 12:00]


昭和のラジオ局で巻き起こる抱腹絶倒のドラマ


 「こえかぶ」初日,草月ホールの客席に足を踏み入れると,そこは懐かしの昭和だった。ステージ上に組まれた本格的なセットには,レトロな機材や小道具なども置かれていて,いかにも昔の収録スタジオという雰囲気だ。

 いよいよ開演の時刻になると,嵐の効果音とともにキャスト陣が登場。皆さんは着物姿で,舞台上がパッと華やかになる。ちなみに,アナウンサー・京本竹夫役の内田夕夜さんは,紋付き袴にピッチリとした七三分けで,さすがの作り込み。

内田夕夜さん
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 映画俳優・黛 寛太役の高橋広樹さんは,明るい黄色の着物を着流しにして,首からストール(?)を下げるという,イケイケな出で立ちだ。

高橋広樹さん
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 舞台俳優・風吹 蘭役の斎賀みつきさんは,深い青の着物をメンズライクに着こなしていて,さながら粋な芸事の先生のよう。

斎賀みつきさん
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 ディレクター・鈴木昌治役の羽多野 渉さんは若草色の着物がお似合いで,爽やかかつ柔和な雰囲気だ。

羽多野 渉さん
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 舞台上ではラジオ番組「声で楽しむ歌舞伎 こえかぶ」の生放送直前ということで,キャスト陣は慌ただしくしているが,彼らの会話から事の経緯が自然に分かるようになっていた。

 その日は台風の接近により,番組に出演予定だった役者4人が全員来られなくなったため,ディレクター鈴木(羽多野さん)は,ちょうど居合わせた俳優たちを代役として引っ張ってきたらしい。

 出演者たちは渡された番組の台本に目を通し始めるが,アナウンサー京本(内田さん)は「演技なんて無理!」と及び腰になっている。鈴木は「タイトルコールをするだけでいいから」と丸め込むが,果たして……?

 この冒頭のシーンでは,舞台セットのテーブルとイスが使われていたので,まるで小劇場でお芝居を観ているようだった。また,ラジオ番組という背景があるためか,朗読劇ではおなじみの,声優さんが台本を持つ姿もお芝居として溶け込んでいる。同じ芸能として区別する必要もないけれど,今回の公演は「演劇の舞台」と「朗読劇」との境が曖昧になっているような,不思議な感覚を覚えた。

 ここで,物語は生放送の本番3分前に差し掛かる。だが,このタイミングで映画俳優・(高橋さん)が「これってどういう話なの」と鈴木に問いかける。鈴木は焦りながらも,今回朗読する「雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべ いりやのあぜみち)」の概要を教えてくれる。

 しかし,黛はさらにツッコんで聞こうとし,対する鈴木は「もう時間がないのにー!」といった気持ちが溢れて,今にもパンクしそうな雰囲気だ。そこへ,舞台俳優・風吹(斎賀さん)のクールな一声が響く。彼女は登場人物や関係性,この幕の前に起きた出来事を簡潔に解説し,黛も納得したようだ。

 これら歌舞伎の演目についての解説は,生放送の本番直前という状況もあって比較的早口で語られていたが,そこはさすがプロの声優,淀みない滑舌でしっかり聞こえたし,会話のやり取りの中で説明されていったので非常に分かりやすかった。

 そしてついに生放送本番が始まる。京本の柔らかいナレーションに続けてチョンと柝(「き」と呼ばれる拍子木)の音が響き,三味線が鳴り出すと,舞台は一気に江戸の風情に。

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 物語は主人公・直次郎(なおじろう)の一人語りから始まるのだが,彼は色男ということで黛,つまり高橋さんのお声もイケメンらしい,かっこいいトーンだ。そして直次郎が立ち寄る蕎麦屋の主人は鈴木が担当するが,そのシワがれた声を出しているのが爽やかな羽多野さんだということに,軽く脳が混乱してしまった。羽多野さんは,直次郎から手紙を預かる按摩の丈賀(じょうが)役も兼ねているが,こちらはさらに老年で少し品のある声。丈賀と蕎麦屋のオヤジが会話する場面は,羽多野さんが1人で会話しているような形になったのもおもしろかった。

 また,要所要所で京本のナレーションが入る。当初はタイトルコールだけのはずが,他の出演者に押される形で渋々,ト書きを読むことになり,「え,ここも読むの!?」といったジェスチャーでの会話が笑いを誘う。また,彼は自分が読むパートではないからと,マイク横のイスに座って一息ついていたりも。京本を演じる内田さんはそういった小芝居をちょこちょこ入れていて,観客を沸かせていた。

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 極め付きは,直次郎の悪党仲間,“暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)”の登場シーン。丑松の台詞も京本が読むことになるのだが,これまた出演者に「暗闇の丑松!」と連呼されて仕方なくマイク前に立つといった流れ。そのうえ,まだ役に成り切っていない,ちょっと棒な演技が絶妙だった。

 後述するアフタートークでは内田さんが観客に向けて,今日の帰り道,「こえかぶ」で気になった歌舞伎のことを検索してみてはという提案がなされたのだが,間違いなく「暗闇の丑松」は検索ワード上位に入ったと思う。

 丑松は直次郎とともに,この物語を書いた河竹黙阿弥(かわたけ もくあみ)の代名詞である「七五調」の台詞を掛け合いで言うのだが,京本も黛にノセられる形で,トントンとリズムよく台詞を言えるようになっていく。そのやり取りも客席を盛り上げていた。

 次の場面では,風吹が務める,遊女の三千歳(みちとせ)が登場する。恋人の直次郎と久々に会えて喜ぶ声はウキウキとして明るいのだけれど,直次郎が追われる身と聞かされてからの声色がかっこいい。「一緒に逃げよう」「いっそその手で殺して」という言葉には,遊郭のトップに上り詰めた花魁らしい,潔さや覚悟の決まりっぷりが感じ取れた。

 実は,筆者はこの歌舞伎「雪暮夜入谷畦道」(通称・直侍/なおざむらい)の映像を観たことがあった。そこでの三千歳は,フワフワとかわいらしいけれどヤンデレな面もある女性という印象で,お話もちょっとコメディに思えていたのだけれど,風吹の打ち出す三千歳はリアルに感じられた。今回は女優さんが女性キャラクターを演じていることも影響しているかもしれない。個人的には,斎賀さんの三千歳に憧れるし,共感できる。

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 さて,物語も終盤となり,三千歳を身請けしようとする侍・市之丞(いちのじょう)が現れて,直次郎とひと悶着。市之丞は,鈴木が担当したわけだが,以前の2役との演じ分けはもちろんのこと,武士らしくも三千歳に身請けを迫るねちっこさも表現されていた。

 そんな市之丞は直次郎とやり合ったあと,三千歳との仲を認めて去っていくのだが,彼があっさり身を引いた裏には,ある秘密があったようで……?

 その矢先,「御用だ!」と,直次郎を捕らえようと追手が迫る。実は,暗闇の丑松が直次郎の居場所を密告していたのだった。1人逃げ出す直次郎と,残された三千歳,2人の別れの場面で幕となった。

 ちなみに,この市之丞が登場する場面は,近年の歌舞伎の舞台ではカットされることが多く,先述の舞台映像でも直次郎が逃げるところまでスキップされた形だったが,まさか「こえかぶ」でやってくれるとは……。やっぱり,このシーンがあったほうがお話としておもしろい。

 舞台上では,一仕事終えた出演者たちがテーブル席になだれ込み,ディレクター鈴木の用意したお茶をすすりながらしばしの休憩を取る。お茶は湯呑で出されていて,ペットボトルがまだない昭和なんだとハッとさせられた。そういえば,冒頭のシーンでも「禁煙の部屋なんてあるのか」だとか,「国鉄」といった言葉が挟まれていた。昭和の頃はそこらで煙草が吸えたし,電車は民営のJRじゃなくて国が運営していたんだっけ……。こういった細かい演出のおかげで,劇場内は江戸時代の物語を体験しつつ,昭和にも浸れるという不思議空間になっていた。


キャストがノッリノリな「仮名手本忠臣蔵」


 次の演目は赤穂浪士の討入事件を題材にして作られた「仮名手本忠臣蔵」(かなでほん ちゅうしんぐら)。大石内蔵助をモデルにした,主役の大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)役に立候補したのは,なんとアナウンサー京本だった。彼は先ほどの「直侍」で,お芝居の味を占めたようだし,「忠臣蔵」も好きらしい。

 一方で,なかなか決まらないのが遊女の“おかる”役で,適役と思われた舞台俳優・風吹はこの役を断固拒否。彼女がおかる役を敬遠する背景には,父親との関係性があるようだ。風吹の父は歌舞伎俳優であり,おかるは彼の当たり役らしい。

 それを知って,彼女のこれまでの振る舞い,歌舞伎には詳しいのに,あまり好んではいない様子にも合点がいった。同時に,本公演の現代パートにも,ちゃんと人物を掘り下げるストーリーが用意されていることに少し驚いた。観劇するまでは,現代パートはキャスト陣のわちゃわちゃを楽しむ時間なのかと想像していたので,ちょっとシリアスな場面もあるとは思わなかった。

 結局,おかる役はディレクター鈴木が務めることになり,どこからか出てきた(実際は舞台スタッフさんが持ってきた)女性ものの羽織を着て本番に臨む。今回朗読するのは,「仮名手本忠臣蔵」の七段目,祇園一力茶屋(ぎおん いちりきぢゃや)の場だが,それ以前の話の流れも分かるように,かつ,放送時間内に収まるように映画俳優・があらすじを大胆にかいつまんでいく。

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 「仮名手本忠臣蔵」に限らず,歌舞伎で長編の物語をやるときには,いずれかの場面を抜き出して上演されることが多いけれど,そこだけだと人間関係や,心情などが分かりにくかったりもする。だから今回の「こえかぶ」で,「仮名手本忠臣蔵」の流れをちゃんと理解できてよかった。

 また,黛の力業を目の当たりにして「この人って勢い任せだけど,何とかしてしまうんだよね」なんて,彼のキャラクター性が自分の中ですでに定着していることに気がついた。開演してからの短い時間の中でも,高橋さんの演技から多くの情報を受け取っていたんだ,とも思えた。

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 祇園一力茶屋の場では,ここで働くおかるが「あいあいー」と,登場して会場を和ませる。羽多野さんは歌舞伎の女形さんのようなアプローチをされていて,声もとてもかわいらしい。その親しみやすさから,おかるが素直な心根の持ち主であることも伝わってくる。

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 さて,一力茶屋の奥では,大星由良之助がドンチャン騒ぎをしている。ラジオの台本には「ここで適当にお座敷唄を」と書いてあったらしく,京本が半ばヤケになって野球拳を歌い出す。ここの内田さんの振り切れっぷりと,「アウト,セーフ……」に「江戸時代〜!」というツッコミが入ったのがもう最高だった。

 と,そこへ風吹が演じる平右衛門(へいえもん)という足軽が,「自分も敵討ちに加わりたい」と由良之助を訪ねてやって来る。由良之助は敵討ちの意志がないと見せかけるために,遊び人のフリをして彼をあしらうのだが,この2人のやり取りにいつの間にか没入していて,さっきまで野球拳で大笑いしていたことなど頭からさっぱり消えていた。というより,もう京本というフィルターも飛んでいって,敵討ちにかける思いを腹に持ちながらも,うつけに徹する由良之助をそのまま見ているような感覚だった。

 そんな由良之助の凄み,恐ろしさをも感じられたのが,おかるに身請けを持ちかける場面だ。興味本位とはいえ,おかるが敵討ちに関する重要な手紙を読んでしまったと知った由良之助は,口封じのために彼女を身請けして,そのあと消そうという心づもりだ。ここの由良之助の声がひたすらに明るく優しいのがすごく怖いし,その裏にある,そうまでして敵討ちを成就させたいという強い意志にも身震いする。

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 続いての場面では,おかるの兄である平右衛門が,その身請け話を聞いて由良之助の思惑に気づくのだが,そのあとの兄と妹の会話がグッと来る。「どうせ消されてしまうなら,兄の手にかかって,敵討ちに加えてもらうための手柄となってくれ,その命をくれ」と斬りかかる平右衛門。対するおかるは抵抗するも,愛する夫も父親もすでにこの世を去っている事を知ると「生きている意味もない,死んで兄さんの役に立てるなら」と身を差し出そうとして……。とても仲のよい兄妹だからこそのやり取りに,胸が苦しくなる。そうなってしまうのも,羽多野さんと斎賀さんの緊迫した演技の賜物だろう。

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 あわやというその時,奥で事情を聞いていた由良之助が「早まるな」と兄妹に待ったをかける。そこからは彼の名采配で事が丸く収まるのだが,床下に潜んでいた裏切り者をおかるに斬らせ,亡き夫に代わって敵討ちの手柄を立てさせる……,というのがなかなか衝撃的だ。由良之助自身も,裏切り者にこれまでの怒りをぶつけるのだが,内田さんの鬼気迫る声が会場にビリビリと響き渡っていた。

 そうして「祇園一力茶屋の場」も結びとなり,無事に2つの演目を演じきった出演者たちは,達成感と喜びを分かち合いながらスタジオをあとにした。

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歌舞伎俳優もベタ褒め! アフタートーク

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 終演後のアフタートークでは,キャスト4人と中村鷹之資さんによるおしゃべりに花が咲いた。まずは,鷹之資さんが本公演の感想を語ってくれたのだが,「歌舞伎を知っている立場から見てもおもしろかった,素晴らしかった」という言葉に,キャスト一同も胸をなでおろしたようだった。

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 キャスト陣には,今回の共演メンバーについてどう思うかという質問が投げかけられた。斎賀さんは他の日の出演者ともお稽古されたそうだが,それぞれでテイストがまったく違ったとか。そしてこの初日のメンバーは“お笑いチーム”だそうで,楽しくやれたとのこと。

 続いては,稽古中のエピソードについて。高橋さんからは「練習日程の早期から,稽古場に平田さんからの差し入れが届いていた」という証言が寄せられ,キャスト陣からは「さすが平田さん」という声があがっていた。

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 また,内田さんは稽古が始まる前に歌舞伎を観劇したことや,歌舞伎俳優さんのしゃべり方を勉強するためにツテを辿った結果,縁あって義太夫の重要無形文化財保持者(人間国宝)である,竹本葵太夫さんに巡り合えたことを話してくれた。そこでの稽古の賜物か,鷹之資さんからも「ここは本筋のあの台詞だ」という味が出ていたと,賛辞が送られていた。

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 羽多野さんも歌舞伎には不思議な縁があったようで,小学生時代はPCエンジンソフトの「天外魔境 風雲カブキ伝」にハマっていたとのこと。こちらはカブキ団十郎という歌舞伎役者が主人公のRPGで,声優さんによるキャラクターボイスも収録された作品だった。これが声優という世界,歌舞伎という世界に強い興味を抱くきっかけとなったそう。そうして今,ご自身が声優になり,歌舞伎と関わるお仕事ができることをうれしく思っているとも語ってくれた。

 続いて「歌舞伎の台詞で難しかったところは?」と聞かれて,斎賀さんは花魁のしゃべり方などを挙げていた。同じく,遊女のおかるを演じた羽多野さんは,彼女の感情が高ぶる部分,涙する部分など細かく教わりながら取り組まれていたそう。

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 ちなみに,鷹之資さんによれば,歌舞伎でおかるを演じる役者さんは七段目だけでなく,それ以前の段で描かれたおかるのことも頭に入れて舞台に臨まれるものなのだとか。また,羽多野さんのおかるは,その人となりが出ていて,かわいらしい,いいおかるだったと太鼓判を押されていた。それを受けて羽多野さんは「うれしいわいなー」と,おかるっぽく微笑んで見せてくれた。

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 そんな羽多野さんが一番緊張したと語るのが,ラストの煙草を吸うシーンだそう。ラジオ番組の終了後,ディレクター鈴木は1人スタジオに残って一服するのだが,そこでは本物のマッチで煙草に火を着けていた。実は,羽多野さんはそれまで煙草を吸ったことがなかったうえ,マッチのつけかたも怪しかった模様。そこで稽古の際に「練習してきて」とマッチ箱を渡されたらしいが,中にはマッチが2本しか入っていなかったというエピソードも披露してくれた。

 演出の話題は内田さんからも飛び出した。アナウンサー京本による「本日の……」という柔らかナレーションは,当初,かっこいいベルベットボイスだったそうだが,「もっと楽しい感じで」というディレクションにより,あのコロコロとしたようなしゃべりになったらしい。内田さんとしても「さすがにこれはダメだろう」と思うレベルでぶつけてみたところ「それで!」とゴーサインが出たとか。

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 アフタートークは登壇者の皆さんからの「ぜひ歌舞伎にも足を運んでほしい」というメッセージで締めくくられた。その中でも,「歌舞伎と声優は別々のものに思われがちだが,様式が少し違うだけで,ストーリーの登場人物として演技をするということはまったく同じ」という,高橋さんの言葉が印象深かった。

 また,歌舞伎と声のお仕事とが共存して発展していってくれたらうれしいという,斎賀さんのコメントにも明るい未来を感じる。
 内田さんは「歌舞伎は誰もが普通に観に行けるもの」という,歌舞伎初心者の背中を押してくれる言葉とともに,お手頃な料金で観られる一幕見席も復活したのでぜひ,という具体的な提案もされていた。

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※一幕見席/ひとまくみせき。歌舞伎座の4階席のことで,チケット代は1000円〜2000円ほど。通常の座席は,2〜3作品がセットになった昼の部,あるいは夜の部ごとに販売されているが,一幕見席はその中の好きな演目だけ選んで観られる。コロナ禍では休止されていたが,2023年6月にリニューアルして再開

 今回,「こえかぶ」を体験して,あらためて歌舞伎のストーリーはブッ飛んでいておもしろいと実感したし,声優さんの渾身の演技は日本の宝だと思った。今回の映像の放送はもちろんのこと,「こえかぶ」第3弾の実現が待ち遠しい。余談だが,今回朗読された「祇園一力茶屋の場」が,2023年の12月から京都・南座にて上演,しかも片岡仁左衛門さんが出演されるとあって,遠征しようかとソワソワしている。

「こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎」公式サイト

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